ASEAN外交、一層の信頼強化で対中牽制を
東南アジア諸国連合(ASEAN)は今月、設立50年を迎えた。経済成長は著しいが、中国による南シナ海の軍事拠点化という問題に直面している。
日本は設立当初から、ASEANと密接な関係を維持してきた。一層の信頼強化で中国を牽制(けんせい)し、法の支配に基づく国際秩序を維持するよう求める必要がある。
中国が取り込み図る
今月初めにはフィリピン・マニラでASEAN関連の外相会議が開かれた。中国とASEANの外相会議では、南シナ海の紛争防止を目的とする「行動規範」の枠組みを承認した。
枠組みは「原則」として、各国の独立や主権、領土保全、内政不干渉の原則を尊重するとうたっている。一方、「法的拘束力」の有無には触れていない。中国の反対によるものだが、これでは行動規範の実効性確保は困難だ。
今回の議長国フィリピンは、中国を相手取った南シナ海問題の仲裁裁判で「勝訴」したにもかかわらず、昨年のドゥテルテ政権発足後に経済援助を得るために中国へ急接近。このため、対中強硬派ではベトナムが取り残された形だ。
中国は経済力を武器にASEAN諸国の切り崩しと囲い込みを図っている。しかし、このような強引なやり方で中国とASEANとの信頼関係が深まるかは疑わしい。
一方、日本は長年、ASEANとの信頼関係構築に努めてきた。今月17日は、日本の対東南アジア外交政策を示した「福田ドクトリン」の表明からも40年となる。
1977年8月、福田赳夫首相(当時)がマニラで発表したもので①軍事大国にならない②「心と心の触れ合う」関係を構築する③「対等なパートナー」として東南アジアの地域的共存と安定に寄与する――という内容だ。この年には、他国に先駆けてASEANとの首脳会議を開催。翌年には外相会議も開かれた。
日本は福田ドクトリンを踏まえ、経済・金融面での技術指導と統合推進を図った。政治的にはカンボジア和平などで地域機構としてのASEANの存在感を大きくする方向で協力支援してきた。
それはASEANの発展に資する形で成果を残してきた。例えば日本の自動車産業による水平分業などがなければ、ASEANは今日のように経済共同体に向けた歩みに踏み出せなかったと言える。日本は企業進出によって、各国の経済基盤の底上げに貢献してきた。
日米の協力が必須だ
安倍晋三首相も2013年1月、対ASEAN外交の原則として「思想・表現・言論の自由の十全な実現」「海洋における法とルールの支配の実現」などを掲げた「安倍ドクトリン」を発表した。
中国の強引な介入を阻止するのは日米の協力が必須である。日本としては多国間協力機構として地域の安定に寄与するASEANの機能強化を図らねばならない。ASEANの平和と発展に、これまで日本が築いてきた信頼関係を役立たせることが求められる。