ASEAN、日米と結束し中国に対抗を
東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の一連の外相会議が、日米や中国などの外相も参加してフィリピンで開かれた。
創立50周年を迎える
ASEANは今月、創立50周年を迎えた。冷戦時代の1967年にインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国で発足。5カ国の政権は当時、いずれも反共を主張し、ベトナム戦争では米国を支持した。
冷戦終結後、ベトナムやカンボジアなどが加わって現在は10カ国で構成されている。10カ国の人口は6億2329万人(2014年)と欧州連合(EU)の5億人より多い。国内総生産(GDP)は1990年の3700億ドルから2010年には約2兆ドルに拡大した。これからも人口増加と経済成長が見込まれている。
現在、中国は軍事力拡大によって南シナ海の実効支配を強めている。南シナ海の大半に主権が及ぶという不当な主張は、オランダ・ハーグの仲裁裁判所で退けられたが、今後も無体な主張を繰り返し展開してくるものと予想される。
一方、中国は経済援助を通じてASEANの「親中派」形成に努めている。仲裁裁判を提起したフィリピンも、ドゥテルテ政権が経済援助を得るために中国に急接近し、南シナ海の一時棚上げを宣言している。このような中国の切り崩しは看過できない。
中国はASEANとの外相会議で、南シナ海の紛争防止を目的とする「行動規範」の枠組みを承認した。この枠組みは、南シナ海の「航行・上空飛行の自由」の確保を明記。「原則」として、各国の独立や主権、領土保全、内政不干渉の原則を尊重するとうたっている。
だが、中国の反対で法的拘束力の有無には触れていない。行動規範は海上協力の推進と緊張緩和が主眼で、領有権問題を直接解決するものではないとも確認している。これでは中国の強引な海洋進出に歯止めをかけられるか疑わしい。
南シナ海は、日本にとっても死活的に重要なシーレーン(海上交通路)だ。河野太郎外相は日本とASEANの外相会議で、南シナ海問題について「深く懸念する。非軍事化の必要性を訴えていく」と述べた。不当な中国の圧力に対抗するには、日米とASEANが結束し、中国に仲裁裁判決を受け入れさせる必要がある。
一方、27カ国・機関がアジア太平洋地域の安全保障問題を中心に討議するASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議では、北朝鮮の核・ミサイル問題について協議した。北朝鮮の李容浩外相は「米国の敵視政策と核の脅威が清算されない限り、核と弾道ミサイルを交渉のテーブルに乗せることはない」と述べ、核兵器開発をめぐる対話を拒否する考えを表明した。
北への国際的圧力強めよ
この問題について、多くの参加国からは「国際社会全体の平和と安定に対する脅威だ」として懸念を示す意見が相次いだ。
河野外相は「関連安保理決議の厳格かつ全面的な履行が重要だ」と訴えた。北朝鮮への国際的な圧力を強める必要がある。