中国は仲裁裁定を受け入れよ


 東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本、米国、中国など計18カ国の首脳が参加して地域の安全保障問題を話し合う東アジアサミット(EAS)が、ラオスの首都ビエンチャンで開かれた。

 最大の意義は、南シナ海での中国の主張を否定した仲裁裁判所の裁定後、領有権問題の関係国が顔を合わせる初めての会議であったことだ。

日米などがそろって要求

 そして最大の成果は、東・南シナ海で進出を続ける中国に対し、日米などが裁定の受け入れをそろって要求したことだ。

 安倍晋三首相は「緊張を高める行動を自制し、国際法に基づき平和的解決を追求すべきだ」と強調。オバマ米大統領は「裁定は最終的で拘束力がある」と指摘した。日米の共同歩調は、傍若無人の行動を続ける中国を牽制(けんせい)する上で効果的であったと評価される。

 だが、中国の李克強首相は「南シナ海問題は当事国の問題」として「他の国は関与すべきではない」との立場を主張した。われわれは中国に裁定受け入れを求め続けなくてはならない。中国の狙いは、日米を南シナ海問題の「域外国」として扱うことで批判の矛先をかわし、投資や経済援助でASEAN諸国を懐柔することだとみていい。

 残念ながら、その狙いは一応成功を収めたようで、議長声明には裁定への言及はなかった。日米の巻き返しが必要だ。

 中国は南シナ海問題を関係国との2国間で解決しようとしている。その意味で、オバマ大統領が中国での習近平国家主席との会談で裁定に従うよう直接要求したことは適切であり、日本やASEAN諸国を勇気づけるものとして歓迎される。

 残念だったのは、EASの直前にフィリピンのドゥテルテ大統領とオバマ大統領の会談が流れたことだ。ドゥテルテ大統領の暴言によるものだが、同盟国である米比両国が対中国で足並みをそろえなければならない時だけに極めて遺憾である。結果的に中国を利したことを自覚すべきだ。米比同盟関係を無用に波立たせたとすれば、大きな失態と言えよう。

 EASでの議論で注目されるのは、複数の国が南シナ海での「非軍事化」に言及したことだ。習主席は昨年9月の米中首脳会談で「島嶼(とうしょ)を軍事化しない」と約束したので、改めてくぎを刺したものとみていい。

 一方、オバマ大統領はASEANとの首脳会議で、南シナ海での中国の軍事拠点化を防ぐ方策について議論を交わした。さらに、航行や飛行の自由を守るために引き続き同盟国を支える米国の姿勢を強調した。

米は一層のアジア重視を

 われわれが望むのは、米大統領が超大国の指導者として、もっとアジアに関心を向け指導力を発揮することだ。任期中最後のアジア歴訪を行ったオバマ大統領は、ラオスでの演説で「リバランス(再均衡)」の名でアジア重視政策を強調した。しかし、北朝鮮の核・ミサイルや南シナ海問題での進展はない。

 オバマ大統領の任期はあと4カ月余り。最後の遺産として、対中外交での日米共同歩調を強化してほしい。