北の核実験、実戦配備に向かわせるな


 北朝鮮北東部の咸鏡北道吉州郡豊渓里付近で地震の規模を示すマグニチュードが約5と推定される人工地震波が観測され、同国国営の朝鮮中央テレビはその数時間後に核実験を「成功裏に行った」と発表した。北朝鮮による核実験は5回目で、今年に入って連続的に発射している弾道ミサイルと共に、その威力や精度が高まっている恐れがある。北朝鮮の核・ミサイルは日本をはじめ周辺国にとってもはや差し迫った現実の脅威である。

小型化・軽量化に自信

 同テレビは「核武器研究所」の声明を読み上げ、今回の核実験は「核弾頭爆発実験」で「小型化、軽量化、多種化された、より打撃力の高い各種の核弾頭を決心さえすれば必要なだけ生産できるようになった」と指摘、核の兵器化に自信を露わにした。

 特に北朝鮮は最高指導者・金正恩委員長の時代になって以降、長距離弾道ミサイル「テポドン」以外にも短中距離弾道ミサイルの「スカッド」や「ノドン」、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を30発以上も発射してきた。近年は相手に発射の兆候を事前に察知されにくい移動式発射台の使用や水中発射が増え、ほぼ狙い通りに着弾させたとみられるケースも少なくない。

 北朝鮮が最終的に目指すのは核を小型化、軽量化させ、弾道ミサイルの弾頭部分に搭載し、核の遠隔攻撃を可能にすることだと言われる。今回、北朝鮮は小型化、軽量化を強調しており、仮にその主張が正しければ、いよいよ実戦配備となり日本や韓国、米国本土までもが弾道ミサイルに搭載した核弾頭の脅威にさらされることになる。

 今回の核がプルトニウム型かウラン型かはまだ不明だが、韓国国防省によると、その威力は10㌔㌧程度で過去最大だ。前回主張した「水爆実験」ほどではないにせよ、着実に攻撃能力を向上させている可能性があり憂慮される。

 実戦配備にメドがつけば国交正常化をにらみ米国を直接交渉の場につかせ、自らに有利な条件をのませる算段だろう。恫喝外交以外の何ものでもない。

 今回の核実験は9月9日の建国記念日に合わせて行われた。国威発揚を狙い、体制引き締めの効果も期待したのだろう。

 度重なる北朝鮮の核実験・ミサイル発射に国際社会は何をしてきたか。中国が議長国の6カ国協議で対話による解決を模索したが、北朝鮮に振り回された感は否めず、再開の見通しすら立っていない。

 国連安保理決議や日本など関係国による各種の制裁措置も取られた。しかし、北朝鮮はそれを嘲弄するように逆に核開発を加速させてきた。

 今回の核実験を受け国際社会は追加の制裁措置を講じるだろうが、北朝鮮に核放棄の不可逆的なプロセスを踏ませるものでなければ今後も核実験は続けられる公算が大きい。

日米韓連携で中国動かせ

 北朝鮮に対する制裁・圧力に限界があるのは、米国と対立する北朝鮮に地政学的な戦略価値を置く中国が、北朝鮮の体制崩壊を望まず擁護するためだ。中国を動かすには、日米韓3カ国が外交・安保上の連携を強化していく以外に道はない。