北朝鮮、5回目の核実験


敵基地攻撃能力の検討も

 元拓殖大教授・吉原恒雄氏の話 北朝鮮の声明を文字通り鵜呑みにすることはできないが、かなり核兵器化段階に進んだと見た方がいい。

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北朝鮮北東部の豊渓里の核実験場を撮影した人工衛星画像=8月27日撮影(Airbus Defense&Space and 38 NorthIncludes material Pleiad-
esCNES 2016 Distrib-ution Airbus DS/SpotImage 提供・時事)

 北朝鮮の核・ミサイル技術は旧ソ連からのものが基本になっている。1991年のソ連崩壊後に、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「R-27」の技術者を雇い入れて技術・ノウハウを導入。これを地上型に改造し中距離弾道ミサイル「ムスダン」を製造している。

 中国からも各種地上発射の移動式弾道ミサイル用の車両や部品を輸入している。中国からの導入は資金次第で容易だ。中国の技術の基本は北朝鮮と同じくソ連からのもので、それを改良進歩させた技術等も、北朝鮮には活用しやすい素地がある。

 中国にとって、数少なくなった共産主義国であり、隣国である北朝鮮の利用価値は少なくない。したがって、中国が国連安保理の制裁決議を本気で履行する意思はない。中国が拒否権を持つ安保理で、北のミサイル発射に対し、法的効力を持ち、かつ実力行使も可能な「安保理決議」が出せず、「報道機関向け声明」にとどまった事実にその本音が出ている。

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 オバマ大統領でなくとも「米国は世界の警察官ではない」と考える米国民は多くなっている。中露両国に対しては、米国の拡大抑止(核の傘)は機能しなくなっている。

 国連はむろん、米国の核の傘も信頼できないとすれば、日本独自の対応策を考えることも必要だ。敵基地攻撃能力の保有を検討することもその一つだろう。

近づいてきた実戦配備

 南成旭・韓国高麗大学教授(北朝鮮学科) 前回の今年1月に実施した4回目の核実験までは北朝鮮が「核保有」を手に入れた段階だったとするなら、今回の核実験は技術改良を重ね、アップグレードさせる段階に入ったとみるべきだ。すなわち、それは核の実戦配備が段々近づいていることを意味する。

 北朝鮮は今回の核実験に関する声明で、核の小型化、軽量化に言及しているが、実戦配備に必要な基準は弾頭部分の大きさが直径1㍍以下、重量1㌧以下といわれるが、9割くらいまで接近しているのではないか。憂慮すべき事態だ。

 これまで北朝鮮は核実験を行ってから次の核実験までおよそ3~4年の間隔だったのが、今回は約8カ月でこぎつけている。核の量産段階に入っている可能性がある。

 当然、国際社会は北朝鮮の核実験を糾弾しなければならないが、これまで表面的には北朝鮮を批判しつつ最終的には態度を留保させてきた中国、ロシアの2カ国がネックだ。恐らく今回も北朝鮮に本気で厳しい姿勢で臨むことを期待するのは難しいだろう。結局は日米韓3カ国の連携が重要であり、日韓の協力が大事になってくる。

 もちろん核攻撃そのものが目的というよりは、実戦配備により米国を直接交渉の場につかせるのが目的だ。そのためには大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成度が求められるが、なお課題を残している。