倒木の犠牲者


地球だより

 かつて「東洋のパリ」と呼ばれたベトナムのサイゴン。1975年のベトナム戦争終結後はホーチミン市と名前は変わったが、仏統治時代の面影をなお色濃く残している。とりわけドンコイ通りは「ベトナムのシャンゼリゼ通り」ともいわれるほどだ。

 パリのオルセー駅(現オルセー美術館)をモデルに造られた中央郵便局やネオ・ゴシック様式のサイゴン大教会(聖マリア教会)、オペラハウスなどを訪問する観光客は、一気に植民地時代の磁場に引き込まれそうなパワーがある。

 なお、植民地時代の遺物の一つが樹齢100年を超える街路樹だ。41年前、北ベトナムが中国製戦車を伴って進軍してきたことを覚えているに違いない、これらの街路樹には感慨ひとしおだが、住民にとっては迷惑な一面もある。

 というのもこれらの街路樹は南国らしく、30メートルを超える高木が少なくない。だから台風や暴風を伴った豪雨などで、なぎ倒されるケースが後を絶たないからだ。

 先月末も、ホーチミン市5区3街区アンズオンブオン通りで高さ30メートル、直径80センチの街路樹が、自宅の前にいたトゥー・ミン・カイさん(25)を直撃し、死亡した。

 郊外の街路樹は下部が白色に塗られたりして車両通行の安全走行に寄与していることもある一方、毎年、何人かはこうした倒木の犠牲者が出ることになる。

(T)