中国のジブチ基地、プレゼンス拡大に警戒を


 中国は、初の海外軍事基地をアフリカ東部のジブチに建設中である。旧フランス領であるジブチは紅海の入り口にある戦略的要衝で、人口約90万人の小さな国。世界貿易物流量の20%が通過するバブ・エル・マンデブ海峡に面する。基地が完成すれば、中国は今後、国際安全保障の面で存在感をさらに増すとみられる。

 艦艇を恒常的に配置か

 基地の広さは90エーカー(36万4000平方㍍)で、米軍基地から約15㌔離れた位置という。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは先月、来年完工予定の基地が「武器の保管や艦艇・ヘリコプターの整備施設、海軍陸戦隊(海兵隊)や特殊部隊の駐屯地」として使用されるとの専門家の見方を紹介した。

 中国は2014年に中国艦船の寄港協定をジブチと締結。すでに中国海軍の艦艇は補給目的で寄港しており、基地が完成すれば今後、フリゲート艦や補給艦船を恒常的に配置する可能性が高い。

 さらに、中国は基地を航空機の発着場として利用するのも確実とされる。中国は新たな大型輸送機「運20」の運用を始めた。米空軍のC17大型輸送機に匹敵するとされる。基地に大型滑走路が建設されれば、中国本土から兵員を運ぶ輸送機が飛来することになる。

 ジブチに基地や拠点を置く各国の立場はそれぞれ違う。米国は01年9月の同時多発テロ以後、アフリカ諸国への軍事支援とテロリスト掃討を目的に基地を置いている。フランスはアフリカにおける自国の権益保護のため、旧宗主国の中で唯一アフリカに部隊を駐留させている。日本も09年からP3C哨戒機と護衛艦をジブチに派遣し、アデン湾に出没する海賊への対処活動を行う自衛隊の拠点もある。

 中国も09年からソマリア沖に軍艦を派遣するなど海賊対処活動を展開している。しかし、大規模な基地をつくる目的が明確でないため、懸念が広がっている。こうした中国の動きに対して「大戦後の世界秩序を支えてきた欧米の安全保障体制への挑戦となるかもしれない」(ウォール・ストリート・ジャーナル)と警戒感が示されるのはもっともである。

 ただ、今回の基地建設は欧州までの経済圏を構築する「一帯一路」構想の一環だとの見方もある。ジブチは中東に近いため、中国はプレゼンスを高めることで経済活動を保護し、自国に有利なルール作りを図る狙いがあるようだ。

 米国防総省は、中国が今後10年間に幾つかの海外基地を確保するだろうと予想している。オマーンのサラーラ、インド洋上に浮かぶセーシェル群島、およびパキスタンのカラチ港などが取りざたされている。中国軍は今後、海外での動きをさらに広げよう。

 西側諸国は心して対処を

 海外で基地を運用している国は、これまで米国、ロシア、英国、フランスに限定されてきた。中国の海外での基地建設は、米国を牽制(けんせい)する以外に、軍事大国としてのプレゼンスの拡大を意味する重要な動きである。この点、西側諸国は心して対処しなければならない。