パラリンピック、心からの声援を送りたい


 南米で初となる障害者スポーツの祭典、リオデジャネイロ・パラリンピックが開幕した。マラカナン競技場で行われた開会式では、「限界のない心」をテーマに障害者競技のさまざまなパフォーマンスが演じられ、先に閉幕した五輪の熱気を蘇(よみがえ)らせた。アスリートたちの12日間の活躍を期待したい。

 障害者競技支える技術

 リオ・パラリンピックには159の国・地域から約4400人の選手が出場し、22競技528種目が実施される。164の国・地域から参加した前回のロンドン大会と比べても遜色のない過去最大規模であり、障害者スポーツへの国際的な関心は高まっている。

 パラリンピックは、医師のルートヴィヒ・グットマンが第2次大戦後の英国で傷痍(しょうい)軍人らのリハビリのために車いすでアーチェリーや卓球を競技することを考案したことから始まった。1948年のロンドン五輪に合わせてストーク・マンデビル病院の敷地で行われたアーチェリー大会は、国際大会のストーク・マンデビル競技大会へと発展し、後に第1回パラリンピックとされた60年ローマ五輪後の大会に23カ国から約400人を集めた。

 第15回となる今大会の競技種目、参加人数の増加ぶりは、医療・福祉の進展だけでなく、障害者のリハビリと社会復帰にスポーツを取り入れた先見の明を示すに十分だ。

 スポーツに不可欠なチャレンジ精神、克己心、緊張感、チームワーク、厳しいトレーニングは、健常者と障害者とを分け隔てるものではない。同じ鍛錬であり、能力の開発であり、人間の力となるものだからだ。

 ただし、競技種目を増やすことを可能にしたのは、障害者競技に必要なツールを開発したメーカーの技術である。競技用の義足や車いすなどは精巧な加工技術を要するものだ。

 車いすだけでもレース用、バスケット用、テニス用など競技種目に応じたスポーツ用品はさまざまな創意を凝らして開発が進んでおり、選手の能力発揮に欠かせないものとなっている。特に義足に関しては、陸上男子走り幅跳びのマルクス・レーム選手(ドイツ)のように健常者の記録を抜くまでになっている。

 パラリンピックはスポーツの新境地を拓(ひら)いていると言ってよい。今大会での選手の活躍が、一層の技術向上につながることが期待される。

 一方、注目度が高まるところで懸念されるのが五輪同様のドーピング問題だ。国際パラリンピック委員会(IPC)は、ロシアによる国家主導のドーピングを受け、ロシア選手除外という極めて厳しい措置を取った。健全かつ健康なスポーツ大会であるべきだ。

 日本の目標は金10個

 わが国は2020年東京大会を控え、リオ・パラリンピックで金メダル10個の獲得を目指している。17競技に出場する132人の日本人選手に心からの声援を送りたい。

 内閣府の統計では国民の6%が障害を持つ。代表して熱戦を演じるアスリートらへの声援が、一般の障害者にも希望となって届くことを願う。