サイバーで産業狙う中国、南シナ海判決では比を攻撃
日本安全保障・危機管理学会主任研究員 新田容子氏に聞く
中国は南シナ海、東シナ海で力による現状変更を行い、サイバー戦もしている。ハイブリッド戦争とみることはできるか。
中国は米国からも我が国からも防衛や軍事だけでなく経済も貿易も機密をどんどん抜いている。係争国のフィリピン、ベトナムなどにもサイバー攻撃を行っている。しかし、専門家たちはハイブリッド戦争とは捉えていない。
まず、中国とロシアのサイバー攻撃の目的において明確な違いは、ロシアは外交および軍事情報が狙いであり、中国が必要なのは海外のビジネス情報だ。去年9月のオバマ大統領、習近平主席による米中首脳会談の際に最も注目を浴びたトピックは、中国が米国に対して仕掛けているであろう国家主体の産業サイバー・エスピオナージ(諜報)だった。
もっと力強いメッセージが出されるかと思いきやそうでもなかった。米国にとっても中国は最大の貿易相手国であるから、言葉尻を強めても、物理的な制裁を課すまでには至っていないし、できないのだろう。
ハーグの仲裁裁判所が中国に南シナ海の領有権を認めない判断をした。その際の中国のサイバー攻撃はどうだったか。
判決が出た7月12日と時を同じくしてフィリピン政府のネットワークに対するDDos(ディードス)攻撃(過剰な負荷で侵害)を開始した。中国はサイバー攻撃をフィリピンの政府から自治体まで各機関・施設に数日間も続けた。紛争あるところ100%必ずサイバー攻撃をまず仕掛ける。南シナ海での例もその一例だ。
中国は仲裁裁判所の判断を支持する我が国、米国やオーストラリアに対して繰り返し強い語調で反発をしている。産業レベルでのサイバー・エスピオナージとは異なるが、自国の戦略の目的を達成するための手段として使用されているのだ。
中国の高いサイバー能力が懸念されている。
中国は自国の経済成長のために海外の知的所有権にアクセスする必要がある。実際、中国は実際に海外を脅かすまでに技術力を高め、経済力を付けて来ている。しかし、技術発展を持続させるためにはより多くのインフラや教育が必要であり、まだこの域には達していない。
今後も経済発展のためにサイバー攻撃を利用しない手はない。米国に対してサイバー・エスピオナージ活動を行っている事例は多くあるが、欧州や我が国に対しても同様の目的で不法アクセスしている。
中国は輿論戦、法律戦、心理戦の「三戦」に力を入れているという。
中国が日本に対し相当なプロパガンダを仕掛けたことがあった。英国紙「フィナンシャル・タイムズ」にほぼ毎日、中国の大使らが投稿して反日意見が載った。日本が反論した記事は比較にならない。日本を知らない外国人には大きい声の方が強い。
今は一つの事象が外交、経済など多岐にわたり国際関係に響く。情報が非常に重要だ。戦わずして勝つとはそういうことだ。戦略をつくる上で一番重要なのは情報であると提言したい。
(聞き手=窪田伸雄)











