ミャンマー、新政権の民主化推進を期待
軍による政治支配が半世紀以上続いてきたミャンマーの次期大統領に、与党・国民民主連盟(NLD)幹部のティン・チョー氏が選出された。文民出身者が民主的な形でトップに就くのは、1962年のクーデター以来初めてで、実に54年ぶりだ。同国が民主化へ向けて歴史的な一歩を踏み出したものとして歓迎される。
スー・チー氏が主導
ティン・チョー氏はNLDの党首アウン・サン・スー・チー氏の側近だ。NLDは2011年の民政移管後初めて行われた昨秋の総選挙で大勝した。だが、ミャンマーの憲法は外国籍の家族がいる人物の大統領資格を認めていない。このため、息子が英国籍のスー・チー氏は大統領になれなかった。
ちなみにこのような資格条項を軍が設けたのは、スー・チー氏の大統領就任を阻むためだったとされる。スー・チー氏は閣外から政権を指揮することになるとみられ、民主化の前進が期待される。
もっとも、ミャンマー新政権は軍との関係で極めて難しい舵(かじ)取りを強いられよう。NLDは議会の過半数を占めているが、憲法の規定により軍が上下両院のいずれでも4分の1の勢力を握っており、軍との力関係がミャンマーの政治の行方を左右するからだ。
したがってティン・チョー氏が、国民が切望する真の民主化を実現するには軍の理解と協力が不可欠となる。換言すれば、ミャンマーの政治の特色は文民政権と軍の二重権力体制だ。
今回も、国会での投票で次点となった軍人議員団選出のミン・スエ氏が第1副大統領に就任する。軍との対立を避けつつ、政治・経済の民主化をいかに前進させるか――新政権には柔軟にして確固とした指針が求められよう。
いずれにせよ、民主化の象徴的存在であるスー・チー氏の腹心が大統領に選ばれたことは歓迎される。市民たちも「スー・チー氏でないのは残念だが、スー・チー氏が選んだ文民が国のトップになったのはうれしい」と喜んでいる。
ミャンマーでは1962年以来、軍による政治支配が続いてきた。88年に権力を握った軍事政権は、90年の総選挙でNLDが大勝した時も、結果を無視して党員らを投獄するなどして弾圧した。スー・チー氏も計15年間にわたって自宅軟禁下に置かれた。
だがNLDはこのような弾圧に屈せず、昨年の総選挙で大勝して政権を手にした。まさに軍に対する国民とスー・チー氏の勝利だと言えよう。われわれの希望は、真の民主化実現へ軍が真摯に向き合い、NLDへの協力姿勢を示すことだ。
日本は経済協力拡大を
人口5000万人のミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と呼ばれる。経済面で大きな潜在力を持っており、日本の大手企業にも進出の動きが出ている。これら企業の成功のカギを握るのはミャンマーの政治の安定だ。
アジアの発展ひいては日本の成長戦略の見地からも、わが国はミャンマーとの経済協力を拡大していくことが大切である。