中国の強権統治は世界の不信招く
わが国の国会に相当する中国の全人代(全国人民代表大会)が、12日間の日程を終えて閉幕した。
全人代で注目されたのは、習近平国家主席の呼称だ。さすがに毛沢東主席や鄧小平氏に使われた「核心」こそは使われなかったが、それでも発言者からしばしば「核心意識」といった「核心」に準じる言葉が出た。
際立つ言論統制強化
習政権は「ハエもトラもたたく」と公言し幹部も小役人も区別なく汚職一掃に動いた。こうした汚職摘発で習政権は、政敵を抹殺しただけではなく、大衆の熱狂的な支持をも取り付けることに成功した。政権の求心力を得た習氏は、毛主席や鄧氏と並び立つ権威への願望があるのかもしれない。
天安門事件を契機に鄧氏は、趙紫陽氏を失脚させ、総書記に江沢民氏を据えただけでなく、ポスト江沢民には胡錦濤氏を指名した。いわば江氏も胡氏も鄧氏の後ろ盾を得ていたのだ。だが習氏にはこの後ろ盾がなく、自ら権威を持つ必要に迫られている。
習氏が総書記に就任して3年間、際立っていたのは強権統治だ。とりわけ人権運動家や弁護士らを投獄して沈黙させ、言論統制の強化にも動いた。全人代前、メディアを視察した際に習氏は「党と政府が主管するメディアの名字は『党』でなくてはならない」と訓示した。
一党独裁政権下の中国で、メディアは「共産党の口」でしかない。メディアは地方権力者の腐敗を暴くことは許されても、党中央の権力に口を差し挟む自由はない。その役割の再認識を習氏は迫ったのだ。
とりわけ近年、目を引くのがインターネット規制の実態だ。中国当局は携帯電話やコンピューターの普及とともに急速に広がっているインターネットの規制に力を入れており、40万人とも言われる「ネットポリス」を動員して、党や政府に不利な情報の除去とネット上の体制批判を摘発している。
しかし、そうした真実に基づいた批判は、政権にとってさらなる信頼を勝ち取る素材になりこそすれ、封印すべきものではない。政権が虚構の栄光によって維持されることはない。
昨年来の中国株・通貨安は市場運営の不透明さが大きな理由だ。強権統治による情報統制に動けば動くほど、世界が抱く不信感は募るばかりだ。
今年の国防予算は前年実績比7・6%増の9543億5400万元(約16兆7000億円)になった。6年ぶりに1桁の伸びに抑えたものの、日本の防衛予算の3倍以上の規模だ。
国防予算の内訳は不明確で、実際は数倍に上ると推計する見方も強い。中国の進める南シナ海の軍事拠点化は「航行の自由」を脅かしかねず、関係国の懸念材料となっている。
共産党独裁は永続しない
全人代では国有企業改革が叫ばれ、とうに死滅しているはずなのに生き残っている「ゾンビ企業」を淘汰(とうた)する必要性が共通認識として浮上した。
だが、ゾンビは共産党一党独裁体制そのものの中にこそ潜んでいる。放置すれば、やがては共産党政権も淘汰されよう。