台湾総統選 蔡氏勝利を祝う
花開いた蒋経國の英断
国民が知恵と勇気ある行動
台湾の国民が勇気と知恵をもって行動に出た。1月16日の台湾総統選及び議会の選挙は民進党が大躍進し勝利を収めた。総統選に関しては国民党の候補を大きく離して民進党の蔡英文がおおよその予測通り圧勝。議会においても躍進し、過半数より11議席多い結果となった。
今回の台湾の総統選挙は初めての女性総統の誕生という意味も加えて、歴史に残るものになったことは間違いない。
また、中国の共産党の下で一党独裁支配を続けられていて、自分たちの運命を左右する政治的決定に関しての権利を否定し続けられている人々にも良い教訓を与えたのではないか。私はここで蒋介石の独裁政権から民主制度への舵取りをした蒋経國の英断に対し、改めて敬意を表したい。
他民族を植民地化し、同化を押し付ける面では国民党・蒋介石も共産党・毛沢東に劣らないほど中華思想の塊であった。国共内戦後の逃走先である台湾において、かつて台湾独立を主張した人々に対しても手加減することなく弾圧を加えた。しかし、蒋経國の偉大さは自分の子供たちを後継者にすることもなく、父親の専制政治を継承することもなく、李登輝が国民の自由意志によって選ばれた総統になる道を切り開いた。
その恩恵を受けた国民は、自らの選択によってその後、今まで3人の総統を選び、国民が主権者であることを世界に示した。選挙の投票率および選挙運動への熱意などはアジアでも例を見ないほど台湾の人々は熱っぽく、積極的に参加している。これも恐らく長い間そのような権利を否定されてきたからこそではないだろうか。日本もこの台湾の人々の選挙に対する情熱から学んで欲しい。
台湾の総選挙を見る限り、若者の参加が目立つ。日本も来る参議院選から18歳に選挙権が引き下げられ、若者の政治への参加に期待しているようである。時代の変化に応じて、参政権も変わることは良いことであるが、1票の権利の尊さと各々が持つ重い責任を痛感せずに時流に流されることがないように祈っている。香港や台湾の政治を見ていると、若者の政治への参加がいかに重要であるかを教えてくれている。
なお、権力の集中と言えば、習近平に関してはもう既にかつての毛沢東に匹敵するかそれ以上の権力を掌握しているようである。しかし、北朝鮮の金正恩も中国の習近平も周囲の邪魔を排除し、なお一層の権力を掌握しようと企んでいる。中国は民主制度を導入できない理由として、多民族国家であることやアジアの文化、特に中華文化に民主制度が馴染まないと言っている。そのため中国的民主主義が存在するかのような言い訳をしている。
しかし、基本的人権の原則など民主主義の基本的特質は普遍的なものであり中国的民主主義、~~的民主主義と言う以前に、最低限度の信仰の自由、言論の自由、思想の自由、表現の自由などの価値はどの民族でも、どこの国の人にとっても重要な要素である筈である。
しかし今、習近平の体制は中国人と他民族との結婚などを奨励し、周囲の人々の民族浄化を推し進めている。また、彼の汚職追放運動もややもすれば単なる権力闘争であって、復讐の道具のような形に進展しているようにも見られる。民族、文化などの多様性と言えばインドのほうが中国よりもはるかに多いはずだが、そのインドは世界最大の民主国家として独立以来民主的な手法によって政権が変動し、その都度、国民の期待に応えられない政権が権力から退くことになっても、インドという国家は毅然として存在している。
習近平にとっては現在の中国の政治情勢において、異例の集中した権力を蒋経國のように大転換させ、中国の人民に言論と信仰の自由を認め、周辺民族の自決権を認めれば新しい中国、より健全な中国の創生となり、その名を歴史に残すことになるだろう。それができるのも十分な力を持つ人間でなければ不可能であるゆえ、その力を私利私欲ではなく、大衆の利益と人々の幸福の構築に大きく貢献し得る可能性もある。つまり、権力者はその権力の使い方によって歴史が評価されるものである。
中国の指導者たちが日頃から民衆の決起を恐れ、不安を感じつつ日々の生活を送っているのに対し、インドの指導者たちがそのような恐怖感を抱かずに済むのは、インドの民主制度のひとつである選挙制度がガス抜きになっているためと思う。それができない中国で、民衆に対して国家権力が武力を通じて抑えようとしても、逆に不満が高まり、窒息しそうになり、爆発する恐れがある。
このことを習近平はじめ中国の指導者たちは恐れており、それに対して更に人民に弾圧を加えるという悪循環から解放されなければ、中国に真の平和は訪れないだろう。自由と人権と正義のために闘い続けてきた台湾の人々の勇気と行動力に心から敬意を表し、このたびの勝利をお祝い申し上げたい。(敬称略)






