島嶼国環境汚染にNGOの一層の活躍を期待
ミクロネシアなど太平洋の島嶼国の環境汚染、特にごみ問題が深刻になっている。これらの島々にはサンゴ礁があるが、ごみが増え、その処理の仕方次第では、消滅も懸念される。環境汚染による危機を克服しなければならない。
ごみ問題深刻な島々
島嶼国のごみ問題は、観光開発や生活様式の変化などが原因となって生じた。国土が狭いため適切な処理ができず、多くは生ごみから産業廃棄物まで平地に野積みにして放置したままというのが現状だ。
これらの島々では悪臭、害虫の発生などによる被害も出ている。また有害物質の流出でサンゴ礁やマングローブ林、さらに生活用水である地下水など自然環境に害を及ぼしている。
これに対し、国連開発計画(UNDP)などが廃棄物管理を支援している。日本でも国際協力機構(JICA)が支援プロジェクトを進めている。一方、自然環境保護には非政府組織(NGO)が力を尽くしているが、この地域に関してもNGOの一層の活躍が期待される。
世界各国、特に欧米、アジア諸国は太平洋に海洋資源を求めて進出している。しかし、海洋における自然環境保護のためのルールや施策はほとんど実効性がないのが実情だ。
従来、島嶼国開発のための資金調達は世界銀行(国際復興開発銀行)やUNDPなどの機関が行っており、加盟国が資金を拠出するというのが原則になっている。
ところが海洋環境を守るために国連が行うべき資金繰りについての話は進んでいない。確かに、地球環境ファシリティ(海洋生物多様性保存のための途上国向け基金)などの組織があって資金調達に当たってはいる。
しかし資金をどこからどのように集め、誰がどのような基準で保護の費用に充てるのかという資金の流れのメカニズムについては整備されていない。資金確保も滞っている。
この分野でも、NGOの存在が重要だ。NGOは国益を超えた地球益重視の視点で活動するというのが趣旨であり、国連もNGOとの協力が不可欠になっている。
海洋資源の宝庫である太平洋では、乱獲による被害も深刻だ。サンゴ礁に生息するナポレオンフイッシュは、絶滅が危惧されている。
近年、欧米やアジアで高級食材として魚の需要が急増し、それに対し、漁獲や運搬の技術も長足の進歩をしたことで、捕獲量が増えているのが原因の一つだ。これらの乱獲問題についても、地球環境保護という視点での解決が必要だ。
共同利用の価値観を
海洋保護の理念については、かつて、国際法の父と言われたグロチウスが海洋の自由論を展開した。その趣旨は、海は私有財産として規定することができないということだ。
海は公共の利益のために管理するには最も好ましい性格をもっている。私有財産を認める市場経済体制においては、この共同利用という考え方はなじみが薄い。海はまさに共同利用物であり、そのための方策を考えなくてはならない。
(10月26日付社説)