訪日外国人の目標達成で観光振興に弾みを
9月の訪日外国人数は、前年同月比31・7%増の86万7100人だった。8カ月連続で前年を上回り、9月として過去最多を更新した。
これで1~9月累計は773万1400人となり、今年の政府目標1000万人の突破が見えてきた。目標を着実に達成し、来年以降の観光振興に弾みをつけたい。
9割以上が「また来たい
沖縄県・尖閣諸島の国有化以降、関係悪化の影響が出ていた中国は、28・5%増の15万6300人と1年ぶりにプラスに転じ、9月では最多となった。最近は日本を敬遠する雰囲気が弱まってきたことが原因とみられている。
円安を背景に、台湾や7月に短期ビザが免除されたタイとマレーシアも大幅に増えた。一方、1~9月累計で首位の韓国は、東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題が響き、年明け以降の勢いに比べ、伸びは鈍化した。
政府は6月に決まった成長戦略で、2030年に訪日客を3000万人以上に拡大する目標を掲げている。これを達成する上で、今年の1000万人突破は第一のステップだ。富士山の世界文化遺産登録や20年夏季五輪の東京開催決定などが追い風になることも期待される。
日本を訪れる外国人旅行者数は、10年に過去最多の861万人を記録した。しかし、これは世界30位にすぎない。1位はフランスで7680万人、2位が米国で5974万人、3位の中国は5566万人に上る。
だが観光庁の調査によると、訪日客の満足度は「大変満足」と「満足」を合わせると9割を超える。「また来たい」という人も9割以上だ。これは日本の「おもてなし」の文化を反映したものだと言えよう。訪日客数を大きく伸ばすことは不可能ではない。
特に注目したいのは、東南アジアからの観光客だ。東南アジアでは所得水準の向上を背景に富裕層だけでなく、海外旅行を楽しむ中間層が増加し、訪日客の裾野が広がってきた。東京都内の百貨店や家電量販店でも買い物をする姿が定着している。こうした旅行者を大切にし、地道にリピーターを増やしていきたい。
また、集客を図るには外国人の視点に立った広報活動が求められよう。その意味で、日本人にとっては当たり前のことでも、外国人には新鮮に映る場合があることにも注意を払う必要がある。
例えば、日本の旅館で従業員が部屋に食事を運んだり、布団を敷きに来たりすることは、外国人にとっては驚きだ。また、山登りで知らない人同士があいさつを交わすことに感動する外国人もいる。観光立国を推進する上で、日本人自身が気付きにくい「魅力」を発見することも重要だろう。
イスラム教徒への配慮を
東南アジアには、インドネシアやマレーシアなどイスラム教徒の多い国がある。宿泊施設は、礼拝や食事に配慮することが求められる。
特にインドネシアは中長期的に潜在需要が大きいとされる。「おもてなし」にさらに磨きをかけたい。
(10月25日付社説)