中国はチベットへの抑圧的な政策改めよ


 オバマ米大統領はホワイトハウスでチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談し、チベット固有の宗教、文化、言語の保護と中国国内のチベット人の人権擁護を強く支持する考えを伝えた。

 チベット自治区などで住民への激しい人権侵害が続いていることに警告を発した形だ。抑圧的な政策では、社会の安定を実現することはできないことを中国政府は認識すべきだ。

 120人以上が焼身自殺

 オバマ大統領とダライ・ラマの会談は3回目で、2013年3月に習近平氏が中国の国家主席に就任して以降では初めてとなる。この会談に対して、中国政府は「中国内政への重大な干渉であり、中米関係を著しく損なうものだ」と反発したが、中国の人権軽視の姿勢を改めて印象付けたと言える。

 毛沢東主席指導の下、中国共産党の人民解放軍は1950年、チベットを攻撃し、51年に17条協定を結んで全土を支配下に置いた。中国政府の記録では62年3月までに「死亡・負傷・捕虜を含めて9万3000人のチベット人を殲滅(せんめつ)した」とされている。中国は徹底したチベット仏教への弾圧を行い、ダライ・ラマはインドへの亡命を余儀なくされた。

 現在、中国政府が進めている同化政策は、チベット人としてのアイデンティティーを抹殺するものであり、反発を招くのは当然だ。中国で焼身自殺を図ったチベット人は2009年2月以降、120人以上に上っている。中国政府は彼らの抗議を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 国際社会ではスペインの全国管区裁判所が昨年11月、1980~90年代にチベットでの「ジェノサイド(大虐殺)」などに関与した容疑で、中国の江沢民元国家主席、李鵬元首相ら元政権幹部5人に逮捕状を出すなどの動きも出ている。

 しかし、中国国内ではチベット人への締め付けが一層強まるとの見方が強い。中国共産党は1月、内外の治安強化に向けた「中央国家安全委員会」を新設し、そのトップである主席には習氏が就任した。国家安全委は冷戦時代に情報機関・秘密警察として恐れられた旧ソ連の「国家保安委員会(KGB)」のような組織だとされる。

 3月には全国人民代表大会(全人代)が開かれるほか、チベット自治区で08年3月に起きた大規模暴動から6年を迎えるため、当局は監視強化などを進めるとみられる。しかし、どれほど力ずくで抑えつけたとしても、チベット人の憎しみを強めるばかりだろう。

 国際社会も中国に対する批判の声を高めるべきだ。特に西側諸国を代表する米国の責任は重いと言える。中国も米国との「新型大国関係」の構築を目標に掲げるのであれば、チベット人をはじめ人権状況の改善に動かなければ、人権問題に敏感な米国の理解は得られまい。

 信頼得られぬ人権意識

 中国は、国連の国際調査委員会が北朝鮮の深刻な人権侵害を裁くため、国際刑事裁判所への付託を勧告したことにも反対するなど、人権意識の低さが目立つ。これでは、国際社会からの信頼を得ることはできない。

(2月24日付社説)