ミャンマー 平和的なデモへの弾圧許すな


 ミャンマーでは国軍記念日の27日、治安部隊が2月のクーデターに抗議するデモ隊に発砲して100人以上が死亡した。平和的なデモに参加する国民を虐殺することは許されない。

 国際的な批判が強まる

 クーデター以降、治安部隊に殺害された人は400人以上に上る。欧米各国や日本など12カ国の参謀長らが今回の弾圧に対して「非武装の市民に対する殺傷力の高い武器の使用を非難する」との共同声明を出すなど国際的な批判が強まっている。

 国軍記念日の式典では、ミン・アウン・フライン総司令官がパレードを閲兵した。総司令官は演説で、昨年11月の総選挙で不正があったとこれまでの主張を繰り返し、クーデターは「避けられなかった」と正当化。「自由で公正な総選挙」を実施し、権限を引き渡す方針を改めて表明した。

 だが欧米や日本を含む海外の監視団は、総選挙が公正に行われたと表明している。総選挙では、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝した。国軍はクーデターでスー・チー氏を拘束し、汚職容疑で捜査を行っている。拘束期間を引き延ばし、政治的影響力を抑え込む狙いだ。

 激しい弾圧の中でも、ミャンマー国民は勇気を振り絞ってクーデターに対する抗議デモを繰り返している。国民がクーデターを受け入れていないことは明らかだ。国軍はこうした民意を尊重してスー・チー氏らを解放し、総選挙の結果に基づく政権樹立に全面的に協力しなければならない。

 バイデン米大統領はミャンマーでの弾圧について「言語道断だ。非常にたくさんの人々が全く不必要に殺害されている」と非難。新たな制裁措置に関し「今取り組んでいる」と説明し、追加制裁の発動を示唆した。バイデン政権は国軍幹部らへの制裁を次々に発動し、暴力停止や民主的に選ばれた政権の回復などを求めて圧力を強めている。

 茂木敏充外相も今回の弾圧を「強く非難する」とする談話を発表。国軍指導部に対し「軍隊は国民の生命を国外の脅威から守るための組織であることを想起すべきだ」とした。

 ただ日本はこれまで、ミャンマーに対して独自の外交を展開してきた。2007年の民主化運動弾圧で欧米各国が制裁を強化した後も、日本は軍政との関係を切らさず、民生部門を中心に支援を継続した。茂木外相は昨年8月のミャンマー訪問の際、スー・チー氏だけでなく、ミン・アウン・フライン総司令官とも会談している。

 国軍による弾圧は極めて許し難いことだが、制裁一辺倒では国軍を擁護する中国の側にミャンマーを追いやってしまいかねない。中国にとって、インドに面したミャンマーは巨大経済圏構想「一帯一路」の要衝だ。中国の習近平国家主席が昨年1月にミャンマーを訪問した際、両国はミャンマー西部チャウピューの港湾開発をめぐる協定を交わした。

 日本は粘り強い外交を

 中国の影響力強化を抑えるためにも、日本はミャンマー国軍に対して弾圧停止を粘り強く働き掛ける必要がある。