バイデン構想 日本も支持し中国に対抗せよ


 バイデン米大統領はジョンソン英首相との電話会談で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するため、民主主義国家が連携して途上国の開発を支援する構想を提案した。

 「一帯一路」を抑え込む

 一帯一路とは、中国を起点に中央アジアから欧州までを陸路で結ぶシルクロード経済ベルトと、中国沿海からインド洋を経てアラビア半島までを結ぶ海上交通路を柱とし、周辺国のインフラ整備を進めようとするものだ。中国はアジア、ユーラシアにとどまらず、アフリカや中南米、太平洋諸国にも積極的な外交を展開して存在感を高めており、さらには「氷のシルクロード」建設を掲げ、北極海での資源開発権を主張し始めている。

 一帯一路の目的は途上国の経済発展にあると中国は喧伝(けんでん)するが、実際には中国経済の成長に不可欠な原材料・エネルギー資源の確保や中国製品の市場開拓に加え、政治軍事的影響力の拡大浸透、さらに国際機関での発言力増大や台湾の追い落としなどを狙ったものである。

 途上国のインフラ整備には莫大(ばくだい)な金額が必要となる。中国は資金獲得の枠組みとしてアジアインフラ投資銀行を立ち上げたが、欧米主導の戦後国際金融秩序に対抗するとともに、将来的には中国を軸とした新たな金融秩序の構築を目指す意図も込められている。

 もっとも、資源獲得のためであれば人権抑圧国家や独裁政権とも手を結ぶ中国の外交姿勢は国際社会から強い批判を浴びている。また返済計画を無視して莫大な資金を貸し付ける一方、債務不履行に陥った国には港湾施設の独占や長期使用を強いるほか、大量の中国人労働者の流入や環境破壊の拡大などの問題も多発し、受け入れ国との摩擦が目立っている。

 バイデン構想の詳細は未(いま)だ明らかではないが、先進民主主義諸国はバイデン氏の考えを支持して中国の野心実現の手段となっている一帯一路政策を抑え込み、途上国の健全な発展と政治社会の安定、そして民主化を促すための開発援助戦略と国際的な協力枠組みの整備に協力すべきである。

 その主導的な役割を担う国は日本をおいてほかにない。4月の日米首脳会談でもこの構想を取り上げ、実現に向けて積極的に関与すべきである。わが国は軍事分野での貢献には制約が伴うが、開発援助ではアジア諸国への長年にわたる資金・技術援助、アフリカ開発会議(TICAD)主導など豊富な経験と実績がある。途上国の側に立ち、根気強くきめの細かい指導に当たる日本の姿勢には高い評価が与えられている。

 開発援助での役割大きい

 援助対象国には、海洋勢力と大陸勢力の境界に位置する戦略的な要衝も多い。第1次安倍政権の麻生太郎外相が提唱した「自由と繁栄の弧」構想は、それら諸国への援助を目指したものであり、バイデン提案を具体化するたたき台ともなろう。安倍晋三前首相の「自由で開かれたインド太平洋」構想が米国はじめ民主主義諸国共通の世界戦略へと発展したが、開発援助政策でも平和国家日本が果たす役割は限りなく大きいものがある。