20年の世界 コロナ禍への反省なき中国


 2020年は、中国・武漢発の新型コロナウイルスが猛威を振るった一年だった。全世界で8000万人以上が感染し、約180万人が死亡。経済にも大打撃を与えた。

 一方、中国はコロナ禍の中でも香港への統制を強化し、覇権への野心をむき出しにした海洋進出を一層強めるなど、その脅威を増大させた。

 香港への統制を強化

 武漢市では昨年12月8日に最初の患者が発症し、市当局が同31日に「原因不明の肺炎発生」を公表したものの「人から人への感染」を明らかにしたのは今年1月20日だった。その上、春節期間中に中国人旅行者が移動したため、世界中に感染が拡大した。

 中国の情報隠しと初動の遅れによってパンデミック(世界的流行)が引き起こされたことは明らかだ。しかし、中国は「米軍がウイルスを中国に持ち込んだ」「ウイルスの真の発生源はインドだ」などと責任逃れをするばかりで、多くの人命を奪ったことへの反省は全く見られない。それどころか、ウイルス発生源をめぐる独立調査を要求したオーストラリアに貿易制裁を行う始末である。

 一方、中国はコロナ禍の中で香港国家安全維持法を制定し、国際社会の批判を浴びた。同法は、1984年の英中共同声明で合意した「一国二制度」を骨抜きにするものだ。

 国際公約を平気で反故にし、自由と民主主義を踏みにじる中国共産党の体質が示されたと言っていい。既に周庭氏ら香港の民主活動家が裁判で実刑判決を受けている。

 トランプ米政権は今年7月、香港の自治侵害に関与した中国当局者に制裁を科す法律を制定。年末には中国チベット自治区における人権や信教の自由を擁護する「チベット人権法」を成立させた。新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区でも少数民族に対する弾圧が続いている。日米豪印をはじめとする民主主義国家は、来年以降も強硬な対中姿勢を貫く必要がある。

 コロナ禍を受け、中国は各国に医療物資や医師団を送る「マスク外交」を展開した。そこには、コロナ禍を利用して国際的影響力を強め、覇権を拡大しようとする思惑がある。

 軍事面でも膨張主義的な行動は一向に収まらない。人民解放軍は今年も南シナ海や台湾周辺で軍事演習を頻繁に実施するなど脅威を増大させている。米戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、海空戦力による演習やミサイル発射などは昨年の約1・5倍に上った。中印国境では今年、45年ぶりに発砲が起きるなど両国の対立が激化した。

 共産主義は諸悪の根源

 ポンペオ米国務長官は今年7月、対中政策について演説し、中国の習近平国家主席のことを「破綻した全体主義的イデオロギーの信奉者」だと批判。このイデオロギーが「共産主義の世界的覇権への長年の願望を説明している」と指摘した。

 共産主義とそれに基づく政治体制は、コロナ禍だけでなく、強権統治や膨張主義など諸悪の根源である。中国に対抗する民主主義国家は、このことを肝に銘じなければならない。