20年の日本 コロナ禍が続く中の日常に


 「ウイルスに年末年始はない」――。菅義偉首相が年末年始を前に感染防止の徹底対策を呼び掛けたように、文字通り今年は中国・武漢市に由来する新型コロナウイルスの感染拡大の防止に明け暮れた一年であった。

 第3波の只中で年越し

 日本はこの1年で感染の大波が3回にわたって押し寄せ、第3波の只中(ただなか)での年越しである。最初の感染者が判明したのは1月だが、感染が広がりだしたのは2月。13人が死亡、712人が感染したクルーズ船の集団感染も、国内最初の死者が出たのも、安倍晋三首相(当時)が全国の学校に一斉休校を要請したのも2月である。

 3月には、東京五輪・パラリンピックの延期(本紙10大ニュース3位)と、タレントの志村けんさんの新型コロナ肺炎による死去の報が大きな衝撃と不安を与えた。政府は4月7日に東京、大阪など7都府県に、16日には全都道府県に緊急事態宣言を発令した(同1位)。

 外出自粛要請で繁華街の人出が消えた。マスク着用と手洗いを日常的に行い、密閉、密集、密接の3密を避け、社会的距離を取ることが新マナーとなった。テレワークを推奨する企業も増えたのである。

 緊急事態宣言は5月下旬に全面解除されたが、経済に大きなダメージを残した。しかし、その後も感染の波は消えないばかりか、海外からのウイルス変異種の拡大も伝わる。その予防のため全世界からの外国人の新規入国を拒否し、経済再生を図る「Go To トラベル」を一時停止する中での年末。今年最大の課題を引きずったままの年越しは仕方ないことでも、何とか行動自粛の徹底で第3波の収束につなげたいものである。

 安倍首相の病気退陣と菅内閣の発足は本来、今年のトップニュースである(同2位)。安倍首相は在任期間が通算、第2次政権以降の連続でも憲政史上最長を記録した。トランプ米大統領との良好な関係を図り、日米豪印を基軸とする「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げて国際連携を推進し、日本の存在感を格段に高めた功績は大きい。継承する菅政権にはコロナ克服、経済再生で着実な実績を積み上げてもらいたい。

 懸念が強まるのは、中国が日本との友好を唱えて擦り寄る一方、中国海警船による沖縄県・尖閣諸島沖の領海や接続水域への侵犯が恒常化していることだ(同5位)。侵略の意図が露(あら)わというべきで、関係当局は最大限の警戒を怠るべきでない。

 明るいニュースでは、秋篠宮殿下の「立皇嗣の礼」挙行(同7位)、探査機「はやぶさ2」から小惑星の試料入りカプセル回収に成功(同4位)、将棋の藤井聡太さんが10代でタイトル二冠を獲得して最年少記録を更新(同8位)、アニメ映画「鬼滅の刃」の歴代1位となる興行収入約325億円の大ヒット(同10位)、スーパーコンピューターの計算速度で「富岳」の世界一(番外)などがある。

 熊本など九州で豪雨被害

 一方で、今年も熊本県など九州で豪雨があり、死者が84人に上るなど大きな被害を出し、今も復興途上にあることも忘れてはならない(同6位)。