静かな年末年始、ステイホームも悪くない


 「静かな年末年始を過ごしていただきたい」――。菅義偉首相は記者会見で、国民にこう呼び掛けた。年末年始の休暇をどう過ごすかが、新型コロナウイルスの感染拡大を抑える上でカギとなる。正月の楽しみは減るが、静かに家族で過ごすことは悪いことではない。

 「Go To」も一時停止

 菅首相は「東京都内の人出はほとんど減っていない。このままではさらなる感染拡大が避けられない」と危機感を表明した。都内では一日の新規感染者の数が1000人に迫る勢いとなっている。

 東京都の小池百合子知事は「年末年始の過ごし方で新しい一年が決まる。『コロナ自粛に疲れた』と言っている場合ではない」と言い、忘年会や新年会、帰省などを自粛し、不要不急の外出を控え家族と過ごす「ステイホーム」を訴えた。

 帰省は、両親の元気な姿を見たり、孫が祖父母と久しぶりに会ったり、旧友と交流したりする貴重な機会である。お盆の帰省をやめ、正月にはと考えていた人も少なくないだろう。しかし、お盆で経験したオンライン帰省などで交流し、絆を確認することもできる。

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」も全国で来年1月11日まで一時停止となった。帰省や旅行による人の移動を抑えるためだ。11月下旬以降、感染が急拡大した東京、札幌、名古屋、大阪、広島各市への旅行は既に支援対象から外れていた。日本人の国内宿泊者数が10、11月には前年の8割台まで回復していたのに残念だ。

 年末年始の感染状況を見ながら、年明けに再開の是非を政府は判断するが、人の移動が感染拡大の原因という証拠はない。移動を抑えれば感染が広がらないわけではない。柔軟な対応が必要だ。

 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は、感染経路不明者の多くが飲食の場を通じたものとの判断を示した。そして「マスク会食」が広がらないことから、会話時はハンカチを口に当てることを提案した。専門家の具体的提案として広がることを期待したい。

 最も重要なことは、医療崩壊を起こさないことだ。日本医師会や日本看護協会など医療関係者9団体は「このままでは全国で必要な全ての医療提供が立ち行かなくなる」と、独自の「医療緊急事態」を宣言した。

 菅首相は重症患者病床1床につき1500万円を補助する方針を発表した。長引く新型コロナとの戦いで疲弊する医療従事者への財政的支援は必要だが、医療崩壊を防ぐ上で求められているのは、感染者、特に重症者を増やさないための努力だ。

 変異種には適切な対応を

 英国で感染が急拡大している変異種が国内でも確認されたことを受け、政府は全ての国・地域からの外国人の新規入国を来年1月末まで拒否すると発表した。変異種の国内流入を可能な限り防ぐための措置だ。

 ただ変異種が生まれること自体は特別なことではないし、感染力の強さが最大の警戒要因だが、今のところ毒性が強くなっているとの報告はない。過度に恐れる必要はないと思われる。