選択的夫婦別姓 「家族の絆」強化こそ必要


 政府が第5次男女共同参画基本計画を閣議決定した。当初案に入っていた「選択的夫婦別氏(姓)」についてはその文言を削除しながらも「さらなる検討を進める」とした。

 これに対して、導入に向け「前進だ」と自民党内に評価する声があるが、逆だろう。「夫婦同姓を守り、家族の絆を強める施策に力を入れる」と明記されないことに懸念を表明すべきなのである。

 6割超が「子供に影響」

 基本計画は「各種制度において給付と負担が世帯単位から個人単位になるよう、マイナンバーも活用しつつ、見直しの検討を進める」としている。選択的夫婦別姓の導入を求める声が出ているのも、社会を家族単位から個人単位に変えようとの考えが、学者、官僚そしてリベラルな政治家の間で強まっているからだ。

 だが、離婚、児童虐待、未婚の男女の増加、そして少子化など、家族崩壊を示す統計は数多い。しかも、どんどん悪化している。そんな時だからこそ、家族の核となる夫婦の絆を強める施策に力を入れるべきなのだ。

 導入に前向きな表現だった当初案に対しては、自民党保守派が巻き返し、「戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ、また家族の一体感、子供への影響や最善の利益を考える視点も十分に考慮し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、さらなる検討を進める」となった。

 基本計画が指摘するように、結婚後も仕事を続ける女性が増えており、女性が働きやすい環境づくりに力を入れるのは重要だ。しかし、家族の在り方について議論する時、最も大切なのは子供の視点で考えることだ。

 夫妻がそれぞれの姓を名乗り続けた場合、子供の姓はどうするのか。親子で別々の姓、あるいは子供間でも違った姓になることもあり得る。家族の一体感が弱くなったのでは子供の心の成長にも悪影響を与えよう。

 平成29年の内閣府調査では、63%が「子供に影響が出る」と答え、「影響はない」の32%を大幅に上回った。また、婚姻によって姓が変わることについて、最も多いのは「新たな人生が始まるような喜びを感じる」(42%)、次いで「相手と一体となったような喜びを感じる」(31%)だった。

 一方で「今までの自分が失われてしまったような感じを持つ」は9%にとどまっている。「違和感を持つ」が23%あったが、長年使ってきた姓を変えるのだから当然のことで、夫婦の一体感が増せばその違和感は消えよう。

 推進派の野田聖子・自民党幹事長代行は「推進派は若手の男性議員が主導し、国民に寄り添う自民党の多様さを見せてくれている」としたが、優先的に寄り添うべき対象は、最も弱い立場の子供たちである。

 禍根を残す個人単位

 働く女性が結婚によって姓が変わることで生じる支障は、旧姓の通称使用を拡充させれば改善できる。働く女性の不便さ解消のため、社会の単位を個人に変えて家族を解体したのでは、日本の将来に禍根を残すことになろう。