来年度予算案 コロナ克服と経済に万全期せ


 2021年度の政府予算案が決まった。規模を示す一般会計総額は106兆6097億円。前年度補正に続き、新型コロナウイルス克服に向けた対策費を盛り込み、当初予算段階で9年連続の過去最大更新となった。

 コロナの影響もあって税収が減少する中、対策費など歳出が膨らみ、財源確保へ新規国債発行が大きくなるなど財政は一段と厳しい運営が続くが、コロナ克服と経済の両立に万全を期してもらいたい。

 企業が先行きに警戒感

 21年度予算案は、15日に閣議決定した20年度第3次補正予算案と一体の「15カ月予算」と位置付け、切れ目なく景気を下支えする。コロナ禍の下、政府として当然の措置である。

 国内総生産(GDP)で7~9月期は実質年率で前期比22・9%増と急回復したが、過去最大の落ち込みとなった前期の反動という面が強く、力強さも乏しかった。12月の日銀全国企業短期経済観測調査(短観)では、コロナ感染再拡大で企業が先行きに強い警戒感を抱き、設備投資にひときわ慎重になっている姿も示された。政府の財政に頼るしかない状況なのである。

 政府も確かに苦しい。歳入面では税収が9・5%減の57兆4480億円にとどまり、不足分は国債に頼らざるを得ない。新規の発行額は33・9%増の43兆5970億円に達し、国債依存度は20年度当初の31・7%から40・9%に上昇した。

 ただ、今はコロナ禍の非常時。歳出では国会の議決がなくても政府の判断で対策に使える予備費を5兆円計上し、予期せぬ感染拡大に備えた。英国では変異種も見つかっている。柔軟に対処できることが肝心である。

 この予備費を除けば、総額は最多更新とはならなかった。最大の歳出項目である社会保障費では、高齢化に伴う自然増加額を本来見込まれる4800億円から3500億円に抑制し、0・3%増の35兆8421億円にとどめた。歳出削減への努力は多としたい。

 21年度は75歳以上の後期高齢者に入る世代の人口がそもそも少ないという事情があり、団塊の世代が75歳以上になり始める22年度以降の自然増は21年度を大幅に上回る見通しである。

 政府は先に、75歳以上の医療費窓口負担について、年収200万円以上の人を2割に引き上げる方針を決めたが、給付と負担の見直しをはじめ社会保障制度の抜本的改革が引き続き必要であることは言うまでもない。

 果断な対処を望みたい

 予算案では防衛費が前年度比微増だが、5兆3235億円と過去最大になった。中国が海洋に限らず、宇宙やサイバーの分野にまで覇権的な動きを強める中、こうした新領域に対する経費が増えるのは当然で、しっかりした対応が必要である。

 またコロナ収束後を見据え、デジタル化や脱炭素社会の実現に向けた取り組みが盛られた。日本経済の今後の成長力強化につながるものと期待したい。

 コロナ感染拡大防止と経済の両立では、需要喚起策「Go To」の全国一時停止などバランスをどう取るか容易ではない。試行錯誤を恐れず、果断な対処を望みたい。