チェコ議長訪台 民主主義の連帯を評価したい


 東欧チェコのビストルチル上院議長が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談した。

 チェコで大統領に次ぐ地位にある上院議長が、外交関係のない台湾を公式訪問するのは初めてだ。自由と民主主義に基づくチェコと台湾の連帯が表明されたことを評価したい。

 「私は台湾人」と演説

 蔡氏はビストルチル氏との会談で「民主化の苦しい道を歩んだ台湾とチェコは、民主主義の防衛線を守り、地域の平和と安定、発展に尽くしている。共に協力すれば、世界により貢献できる」と強調した。

 チェコは共産圏だった1968年、民主化運動「プラハの春」がソ連主導のワルシャワ条約機構の軍事介入で弾圧された苦い経験を持つ。民主化を実現したのは、89年の「ビロード革命」によってだった。

 チェコは2015年、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の協力文書に署名した。しかし国内では、自由と民主主義の価値観を共有するとして台湾の立場に理解を示す声も根強い。かつて共産主義政権の圧政に苦しんだチェコ国民が、中台統一を目指す中国の横暴な振る舞いを看過できないのは当然だろう。

 訪台はもともと、今年1月に急死したクベラ前上院議長が計画していたものだった。地元メディアはクベラ氏が中国側から訪台中止の圧力をかけられていたと報じ、対中不信が広がった。蔡氏はクベラ氏への勲章をビストルチル氏に手渡した。

 ビストルチル氏は台北の立法院(国会)の演説で、台湾との連帯を示すために「私は台湾人だ」と述べ、万雷の拍手を受けた。チェコと台湾の絆が強まったことを歓迎したい。

 先月には、アザー米厚生長官が1979年の米台断交後では最高位の米閣僚として台湾を訪問した。米国やチェコに続き、他の民主主義国家も台湾との関係を強化していくことが期待される。

 一方、中国の王毅外相は訪問先のドイツで、ビストルチル氏の訪台について、中国本土と台湾は不可分とする「一つの中国」原則への挑戦は「14億の中国人民を敵に回すことだ」と強調。ビストルチル氏らに「重い代償」を支払わせると警告した。このような脅迫を容認することはできない。

 欧州連合(EU)議長国を務めるドイツのマース外相は、王氏の発言に対し、EU加盟各国は「緊密に連携し、共通の安保・外交政策を取っている」とチェコを擁護する立場を表明。フランスも「EU加盟国への脅しは認められない」と批判した。

 王氏は欧州5カ国を歴訪したが、先進7カ国(G7)で初めて一帯一路推進の覚書を締結したイタリアでは、ディマイオ外相が「香港の自治に疑問の余地はない」と指摘し、国家安全維持法(国安法)の強引な施行を批判した。経済力で他国に影響を与えることはできても、自由を求める人間の本性までは変えられないことを中国共産党政権は知るべきである。

 日台関係の論議深めよ

 自民党総裁選はあす告示される。候補者は、対中外交や台湾との関係の在り方についても論議を深めてほしい。