内モンゴル 中国の文化抹殺を許すな
中国政府が、内モンゴル自治区のモンゴル語中心の教育を中国語中心に切り替える通達を出し、これに対するモンゴル民族の抗議行動が続いている。民族のアイデンティティーのよりどころである言語を奪い、民族文化の抹殺を図る中国当局の暴挙を許すことはできない。
モンゴル語の教育廃止
内モンゴル自治区ではこれまで「双語教育」の名の下、国語を含む各学科の授業をモンゴル語で行い、小学校3年から中国語の授業を第2語学として行ってきた。ところが内モンゴル自治区教育庁は先月末、新学期の始まる9月1日から、小学校での国語の授業を中国語で行うと通達。中学校以上の教育機関でもモンゴル語での教育を廃止し、2025年には大学受験を全面的に中国語で行うとの方針も伝わっている。
このような動きに対して、内モンゴル自治区では、学校の前で中学生が「モンゴル語を守れ」と訴え、小学校から大学まで授業のボイコットが続くなど抗議行動が続いている。その動画がインターネットで世界中に配信されている。
モンゴルでもこの動きは関心を集め、エルベグドルジ前大統領は「内モンゴルで起きていることは明日モンゴルでも起こるかもしれない」とフェイスブックで抗議への参加を訴えた。国立大学の教員らを中心に首都ウランバートルの中国大使館周辺で抗議活動が展開されている。
中国当局は、チベット自治区や新疆ウイグル自治区でも民族の母語による教育を廃止し、民族文化の根にある言語を奪って漢人化する政策を進めている。民族文化の支柱であるチベット仏教やイスラム教を弾圧して弱体化を進め、収容所での強制的な思想改造まで行っている。
モンゴル語教育の廃止は、中国当局がチベットやウイグルで進めている民族文化抹殺を、内モンゴルにおいても行おうとしていることに他ならない。
かつて中国大陸を治めた満州族の王朝・清朝は「五族共和」をスローガンに掲げ、満・蒙(モンゴル)・回(ウイグル)・蔵(チベット)・漢の融和を掲げ、民族文化も比較的尊重された。それに比べても中国が行っている漢化政策、民族文化抹殺は遥かに劣るものだ。
習近平政権は「中華民族の偉大な復興」をスローガンに掲げているが、漢民族は存在しても「中華民族」という民族は存在しない。そんな虚構を臆面もなく国家のスローガンに掲げること自体、ウイグルやチベットなどの少数民族を強制的に漢族化することを公言しているようなものだ。
これは緩慢な民族文化の抹殺であり、民族浄化(エスニックックレンジング)以外の何物でもない。中国当局が行っていることは、ナチス・ドイツのユダヤ人に対する民族浄化を、より時間をかけ、大きなスケールで進めていることに他ならない。
日本は暴挙を見過ごすな
このような人類文明への暴挙を見過ごしていいはずはない。世界で抗議行動が広がりつつあるが、隣国であり、モンゴルとの交流が進んでその文化に触れる機会も多い日本は黙っているべきではない。