豪州と米の分断図る中国
関税引き上げなどで圧力
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐって米中対立が激化する中、米国の同盟国オーストラリアが新型コロナへの中国の対応をめぐり国際的な調査を求めたことに中国が強く反発、農産品への関税などで圧力をかけている。中国は、経済での対中依存が強いオーストラリアに揺さぶりをかけることで米豪間の分断を狙っていると専門家は指摘する。
中国はオーストラリア最大の輸出相手国で、鉄鉱石、大麦、ワインなど輸出の3分の1は中国向け。米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問のエイミー・シーライト氏は、「オーストラリアは数年前から中国から激しい嫌がらせを受けているが、経済的には中国とのつながりが非常に強い」と指摘。中国はこれを「オーストラリアを米国から引き離す好機と捉えている」との見方を明らかにした。
中国は今月に入り、豪州産牛肉の輸入を制限、大麦への関税を約80%へと大幅に引き上げたばかり。これは、豪政府が新型コロナへの中国の対応への「独立した検証」の必要性を求めていることへの報復との見方が強い。
同時に中国は、国営メディア、ソーシャルメディアで中国との貿易で利益を得ていながら米国に「迎合」しているとオーストラリアを強く非難している。
カーネギー国際問題倫理評議会の上級研究員デビン・スチュアート氏は「経済的脅しと偽情報は中国の二重戦術」と指摘、「この二つの戦術を組み合わせたのは今回が初めてではないか」との見方を明らかにした。
国内で感染収束を受けて中国は、国際的な影響力拡大への取り組み、米国や同盟国への非難を強めている。スチュアート氏は「米国とオーストラリアの間にくさびを打ち込もうとしているのは間違いない」と中国の狙いを分析する。
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は25日、「米国主導の体制が終わり、アジアの世紀が訪れると以前から言われてきた。今まさにこれが目の前で起きようとしている」と指摘、新型コロナ後の中国の台頭へ警鐘を鳴らした。
一方で、中国のオーストラリアへの圧力は成功しないとする見方もある。シーライト氏は「中国からの脅しに対し、オーストラリアは態度を硬化させている」と述べ、強圧的な姿勢が効果を挙げていないことを指摘。スチュアート氏も、「この状況で(抑圧と工作で敵勢力を操ろうとする)シャープパワーを用いると逆効果となることがある」と指摘した。
(ワシントン・タイムズ特約)