今ウイグルで何が起きているのか ~中国による弾圧の実態~
民族抹殺が国家戦略に
日本ウイグル連盟会長 トゥール・ムハメット氏
日本ウイグル連盟会長のトゥール・ムハメット氏は12日、世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤讓良(ゆずる)・近藤プランニングス代表取締役)で「今ウイグルで何が起きているのか~中国による弾圧の実態~」と題して講演し、「ウイグル全土にある強制収容所は800カ所で、少ない所で1万人、多い所では10万人が収容されている。既に100万人が殺害されていると推測され、証拠隠滅のため遺体は電気焼却炉で焼却処分されている」と報告した。以下は講演要旨。
臓器ビジネスの対象にも
若者だけ選び各省に運んで分配
1996年3月19日北京で開かれた中共中央政治局常務委員会の極密会議で、『中共中央第七号文件』が採択され、20年かけてウイグル人を同化させる方針を決定した。この秘密文書で決めた同化政策の一つとして、ウイグルの子供たちを中国沿海部の20カ都市で勉強させている。毎年約5000~7000人の未成年が選ばれ、中国共産党に忠実な人間となるように教育された。これと同時に、2000年から東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)におけるすべての学校でウイグル語教育が禁止となった。イスラム教に対する弾圧も更に強化され、各地のイスラム寺院に対する監視も強化された。

トゥール・ムハメット 人権活動家。農学博士。新疆ウイグル自治区ボルタラ市出身。中国農業大学卒業。新疆農業大学講師。1994年に来日、九州大学留学(99年3月農学博士取得)。97年より留学中の日本で、ウイグル人の人権問題を訴える活動を開始。2015年10月、日本ウイグル連盟会長。
しかし、20年経(た)ってもウイグル人としてのアイデンティティーや中国に侵略された植民地であるという歴史認識は変わらなかった。そのため、中国共産党は方針を急転換し、ナチスドイツがユダヤ人に行ったようなホロコーストとよく似た手法を採用し、新疆ウイグル自治区全土に急速に強制収容所を建設。主にウイグル人を対象に、ジェノサイドを実施するようになった。これが強制収容所が出てきた理由だ。もう一つの理由として、習近平国家主席が打ち出した国家戦略に原因がある。いわゆる一帯一路政策だ。これを実行する上で、東トルキスタンの独立を願う民族意識は大きな障害になる。ウイグル抹殺が国家戦略とつながってしまったわけだ。
最近、海外メディアに中国の高級幹部が400ページ以上の秘密文書をリークした。ウイグル人への対処に関して、習近平国家主席の指示や中央委員会の決定などが記された文書だ。
この中には、中国本土で勉強していたウイグル人の子供たちへの対応の仕方も記載されている。長期の夏休みで子供たちが中国本土の学校からウイグルの家に帰れば、家族が収容所に入れられていなくなってしまったことに気付く。その際に子供たちからの質問にどう答えるかをまとめた問答集だ。
最初の質問は「私の家族はどこにいるのか」だ。これに対する答えは「彼らは政府が設立した教育学校で訓練を受けている。もし、彼らと会いたいのであれば、テレビ画面を通して面会することができる」とある。
また、「私の家族がなぜ勉強しないといけないのか」という質問に対しては次のような回答が示されている。「あなたの家族を勉強させているのは宗教的極端思想や暴力的テロ思想の侵害を受けているからだ。あなたの家庭の幸福のため、彼らは教育センターで集中的に教育を受けるべきなのだ」
もし自分が子供たちの立場だったら、政府からこんな説明を受けてどんな思いになるだろうか。実は私もウイグルに住んでいた娘と2017年12月からずっと連絡が取れていない。娘が今、強制収容所にいるのかそうでないのか、何の情報もない。私のようなウイグル人が現在世界中に何十万人もいる。
収容所に入っていた人々の証言によると、一部の収容所は地下5階と地上9階の建物で、全ての部屋に20人から30人くらいが閉じ込められていた。また、収容者が全員坊主頭で、囚人服のような服を着せられている写真もある。周囲は高い壁と有刺鉄線で囲まれており、監視塔では武装警察が24時間監視している。
強制収容所が始まった時、一番最初に逮捕されたのはウイグル社会のエリートたちだった。各大学の先生、病院の医者、一般学校の教師や会社の社長など影響力のある人たちだ。その中で、新疆大学の学長タシポラティ・テイプ教授や新疆医科大学の学長ハルムラティ・ゴプル教授も逮捕され、2017年に死刑(2年猶予)判決が出ている。
クルアーンをウイグル語に翻訳した宗教学者ムハマド・サリフ師も強制収容所に入れられた。世界的な学者だったので批判が大きかったためか、遺体は焼かれずに家族の前で土葬された。だが、頭が変形して脳出血で亡くなっていたそうだ。イスラム学者には禁じられた飲酒や豚肉を食べることを強制しており、それを拒否したため拷問で殺された可能性がある。
おびただしい数の大人が収容所に連れて行かれ、子供たちが後に残されている状況だ。本土で教育を受ける子供たちへの対応は先ほど紹介したが、それ以外の子供たちがどんな道をたどるのかといえば、一つは殺されてしまうという道だ。子供たちが集団で殺されており、ミルクに毒を混ぜて飲ませるというケースもあるようだ。
二つ目は本土の中国人の養子にされるという道だ。2017年くらいから「ウイグル人の女の子13歳、誰か引き取る方はいませんか」などの広告が出るようになっていた。
三つ目の道は子供専用の強制収容所だ。生活習慣も服も中国様式で、しかも今の中国人も着ないような孔子・孟子時代の様式だ。ある写真には女の子ばかりで男の子は一人もいなかった。私はそれを見て、成人になった彼女たちを中国人と強制結婚させるつもりではないかと思った。もしかしたら男の子だけ殺されている可能性もある。
また、トルファン市の4、5歳の男の子は、両親と祖父母が全員収容所に入れられ、7歳のお姉さんと一緒に家に残っていた。ある日、男の子が夜になっても帰って来ないので探してみたら、近くの溝に落ちて凍死していた。こういうことがたくさん起きている。
さらに収容所のウイグル人は臓器ビジネスの対象になっている。2018年9~12月の4カ月、当局はウイグル自治区と中国本土を行き来する旅客機、鉄道、バスなどの一般客に対するサービスを全てストップさせた。その間に収容所の中からウイグル人の若年層だけ選んで中国本土の各省に運んで分配していた。一説では50万人だが、われわれの推定では100万人が運ばれたとみている。
なぜこんなことをするのかというと、ウイグル自治区から中国本土まで臓器を運ぶのは大変なので、ウイグル人を近くまで移動させておけば、必要な時に殺して新鮮な臓器を入手することができるからだ。これもウイグル人ジェノサイドの一環だ。
ウイグル人1人の臓器の相場は75万~100万ドルと言われている。1人殺せば100万ドルの収入だ。こういうことをやりながら、中国人民解放軍、警察関係者などは自分の私腹を肥やしつつ、そのお金の一部をウイグルの強制収容所の管理費に使っている。
内部情報によると習近平主席は中央政治局で、強制収容所の目的はウイグル人の人口を5~7年かけて700万人のレベルに落とすことだと話していた。中国の統計だと、ウイグル人の人口は1000万人だが、実際の人口は2500万人ではないかとわれわれは考えている。その数が正しければ、中国はウイグル人1800万人を抹殺するつもりでいる。
世界全体を見れば、独裁国家は必ず消えて、自由民主主義国家になっていく流れだ。中国がウイグル人に虐殺を行っているのは、その時期が近付いているので首脳部が焦っているからだ。中国が民主化すれば、ウイグル人は2500万人の人口と日本の4倍の土地と石油・レアメタルなどの豊富な地下資源を手に入れることになる。100万人くらいの軍隊は簡単につくれるだろう。
だから中国共産党上層部はそうなる時代を見越して700万人まで減らそうとしている。そこからもさらに減らしてくるだろうから、中国民主化時にウイグル人口は、今のモンゴルやチベットのように500万~300万人くらいになっているかもしれない。
世界の動きを見ると、米国は中国共産党を追い詰める戦略をスタートさせている。香港人権法が成立し、ウイグル人権法も米下院で可決した。こういう時期に習近平主席を来年日本に訪問させるという判断は完璧に間違いだ。歴史の逆行をやっている。習近平主席の国賓訪問は絶対に阻止すべきだろう。





