香港民主派圧勝、選挙で示された民意の尊重を


 香港の区議会(地方議会)選挙で、民主派は452議席中、85%の388議席を獲得し、歴史的な勝利を収めた。

 香港の民意が示されたと言っていい。香港政府や背後の中国政府は、デモ隊を力ずくで抑え込むのではなく、行政長官選挙での普通選挙実施など民主派の要求に耳を傾けるべきだ。

 議席が約8割超に増加

 区議選は、逃亡犯条例改正案に端を発した6月の大規模デモ以降、初の全土的な選挙。親中派に有利な職能枠から半数が選ばれる立法会(議会、定数70)の選挙と違い、直接選挙で選ばれる。反中感情が高まる中、民主派の躍進が予想されていたが、議席は選挙前の約3割から8割超へと大幅に増えた。

 1997年に中国へ返還された後、民主派が過半数を取ったのは初めてで、投票率は前回(2015年)の47%を大きく上回る71%。返還後の立法会選、区議選のいずれの記録も更新し、過去最高となった。

 民主派は今回の選挙を、行政長官選挙の民主化を含む「五大要求」への信任投票と位置付けていた。大勝の背景には、警察のデモ隊への強硬な取り締まりや中国政府の政治的圧力に対する市民の強い不満があろう。香港の林鄭月娥行政長官や中国の習近平政権は、選挙結果に正面から向き合うべきだ。

 だが、中国側に譲歩する姿勢は見られない。それどころか、強硬姿勢を一段と強める可能性もある。選挙後、中国外務省は「林鄭長官率いる香港政府の施政と、香港警察による秩序回復、司法機関による犯罪行為の処罰を断固支持する」と従来の立場を強調した。

 民主的な選挙で示された民意を踏みにじるような姿勢は許されない。国際社会は香港政府や中国政府の動きを厳重に監視し、民意を尊重するように促す必要がある。

 逃亡犯条例改正案は、香港で身柄を拘束した容疑者の中国本土への移送を可能にするものだった。英国統治時代の法制度が生きている香港に対し、中国の司法は共産党指導下にあり、党の意向に沿わない人物の恣意(しい)的な拘束もあり得る。香港市民が反発したのは当然だ。

 習政権は、香港の高度な自治を保障する「一国二制度」について「一国」を「二制度」よりも優先する意向を示している。しかし、香港市民がこうした「屁(へ)理屈」を受け入れないのは今回の選挙結果でも明らかだ。香港の自由と民主主義を認めるべきではないのか。

 米議会では「香港人権・民主主義法案」が圧倒的多数の支持で可決された。ただ、トランプ米大統領は法案に署名するかどうか明言していない。トランプ氏は来年の大統領選での再選に向けた「成果」として中国との貿易協議を重視しているため、署名には消極的とされるが、法案を早急に成立させて中国への圧力を強める必要がある。

 中国の締め付け許すな

 安倍晋三首相は中国の王毅国務委員兼外相との会談で、一国二制度の下で自由で開かれた香港が繁栄していくことの重要性を指摘した。中国政府による香港への締め付けを許さない姿勢を堅持すべきだ。