米欧、同性婚で男女の婚姻率低下
希薄化する結婚の価値
同性結婚を合法化した米国の州や欧州諸国で、男女の婚姻率が低下している。結婚は男女間のものだという伝統的な定義が崩れることで、結婚の社会的価値が希薄化し、結婚離れを助長するためだとみられている。男女の婚姻率低下は、①出生率の低下②婚外子の増加③中絶の増加――などをもたらす。日本でも東京都渋谷区が「同性婚条例」を制定したが、同性婚が家庭・社会に及ぼす悪影響は計り知れない。(ワシントン・早川俊行)
家庭・社会に「破滅的影響」
米国では現在、同性婚の是非が連邦最高裁で争われており、6月に下される判決で同性婚が全50州で認められる可能性がある。同性婚に反対する専門家100人を代表して最高裁に意見陳述書を提出したジーン・シェア弁護士は「結婚を性別と無関係なものに再定義すると、結婚に対する既存の社会的概念が崩れ、男女の婚姻率を引き下げる」と指摘する。
シェア氏によると、同性婚を認めた州では、実際に男女の婚姻率が低下している。最初の同性婚合法化州となったマサチューセッツ州では8・9%、アイオワ州では9・2%、コネティカット州では7・3%、バーモント州では5・1%、それぞれ男女の婚姻率が低下した。これに対し、全米の婚姻率は2009年から12年にかけて横ばいで推移している。
欧州の同性婚合法化国で男女の婚姻率下落が最も著しいのがスペインだ。ほぼ横ばいで推移していた男女の婚姻率は、同性婚を認めた2005年を境に9年間で36%も下落した。
世界初の同性婚合法化国となったオランダでも、18~22歳の女性の婚姻率が毎年2・8~7・8%低下したという。
ベルギーとカナダでは、全体の婚姻率がそれぞれ7・7%、4・3%低下。男女の婚姻率に限定すれば、その下落率はもっと高いとみられる。
シェア氏は「男女の結婚が減ることは、結婚しない女性が増えることを意味する。これはさらに、生まれる子供の数が減り、婚外子が増え、中絶が増えることを意味する」と指摘する。
シェア氏の試算では、全米で同性婚が合法化され、婚姻率が5%低下すると仮定すると、結婚しない15~44歳の女性は30年間で127万5000人増加する。これにより、本来生まれるはずの子供約176万人がこの世に生まれず、婚外子は約59万人増える計算になるという。
また、女性1000人当たりの中絶件数は、結婚している女性が6・1であるのに対し、結婚していない女性は28・9と大幅に高い。結婚しない女性が増えれば、必然的に中絶も増えることになり、シェア氏の試算では、30年間で中絶件数は90万近く増加する。
これらは男女の婚姻率下落を5%と少なく見積もった場合の試算だ。米国の同性婚合法化州は5%を超えており、実際の数字は試算よりずっと多くなる可能性が高い。
日本では低迷する出生率や一人親家庭の増加に伴う子供の貧困が深刻な課題になっているが、渋谷区条例のように実質的に同性婚を認め、男女の結婚離れを助長することは、既に危機的な状況を一段と悪化させることになる。また、一人親家庭の増加は、貧困拡大という経済的影響にとどまらず、感情・行動面で問題を抱える子供が増えることにもつながる。
シェア氏は「男女の結婚の枠組みが人類歴史を通じて存続してきたのは、子供たちに莫大(ばくだい)な利益をもたらすからだ」と断じ、同性婚によって結婚を再定義することは、家庭・社会に「破滅的」影響を及ぼすと主張している。





