ネット投票、金融街占拠は違法 「愛護香港力量」招集人 李家家氏
香港の普選運動 親中派民間団体代表の見方(下)
――7月1日の民主派組織「民間人権陣線」の大規模デモは香港警察の発表で9万8600人、主催者発表で51万人、香港大学民意研究計画の調査では17万人となっている。デモが行われるたびに警察発表と主催者発表に5~6倍もの開きがあるのはなぜか。
参加者数の調査方法に違いがあるからだ。民間人権陣線の発表では51万人、警察の推計ではピーク時で9万8600人、香港大学民意研究計画の推計では15万4000~17万2000人、香港大学社会工作行政学部の葉兆輝教授の推計では12万2000人。香港大学の調査方法は明示されているが、主催者側の参加者数のカウント方法は明示されたことがない。ところが、興味深いことに、香港の大手メディアは主催者発表を参加者数として報道している。
――香港の主要メディアはなぜ、調査方法すら明示しない主催者・民間人権陣線の発表だけを大きく報道するのか。民主派の動きに反対する立場であれば不満が大きいのでは。
香港の主要メディアは商業ベースで編集するので、調査方法を確認することなく、主催者である民主派団体の発表をそのまま発表するのが通例化している。香港のメディアは親政府系が少なく、反政府系や民主派支持のメディアが主流であるのが現実だ。
――デモの参加者数はどの発表が信頼できるか。
香港警察の発表だろう。警察は中立であり、香港で生活している以上、警察を信頼しなくては何もできない。
――民主派は6月下旬に行った普通選挙についての模擬住民投票でネット投票を含めて79万人が投票したと発表したが、この数値についてはどう思うか。
まず、ネット投票自体、香港基本法(ミニ憲法)に反する違法行為。非合法の投票結果は合法ではない。投票の客観性もまったく不透明で学術的にも稚拙すぎる。模擬投票自体が根本的に無効であり、間違ったものだ。
――1日の民主化デモの後、2日朝まで徹夜でセントラル(中環)占拠を求める一部の市民や学生団体らがセントラルで座り込みをして香港警察が強制排除し、511人が逮捕された。1日のデモの主催者5人もその後、逮捕されたが、どう見るか。
当団体では6月29日に香港でセントラル占拠に反対するデモを行い、占拠という違法行動をする人物を警察は厳しく拘束してほしいと訴えた。台湾の立法院(国会)占拠と違い、香港では何度も座り込みデモは違法であることを警官が告知し、立ち去らないので仕方なく逮捕した。
――1日の民主化デモでは台湾の立法院占拠に加わった人々も応援し、台湾独立や香港独立の連携も見られ、中央政府は警戒を強めているが、愛護香港力量としては、どう対処するか。
香港は一国二制度の高度な自治があり、自由言論の都市なので、台湾人、英国人、米国人、法輪功や天安門事件の再評価を求める人々、いかなる国や地域の人々がどんな主張をしても自由だ。当団体では何の干渉もしないが、違法行為については取り締まってほしい。
――6月10日、中国政府は香港の一国二制度に関する初めての白書を発表し、香港では反発が強いが、どう見るか。
返還して17年過ぎた時点での中央政府の報告であり、香港への圧力ではない。香港メディアは白書を大きく取り上げ過ぎ、香港人は過敏になってしまった。
――民間団体「和平占中環(オキュパイ・セントラル)」が8月末にも金融街のセントラルを占拠する計画だが、愛護香港力量としてはどう対処するか。
香港警察の保安管理能力を信じているので、帰宅して何もしない。1万~2万人が参加すると豪語しても占中の組織メンバーは2500人程度。香港人は話が誇大でも実際は何もしない特性がある。参加希望者の親には違法活動なので子供の将来に影響するから不利になることを説得していく。たとえ参加者が増加して2万人になっても警察は十分に対応できるはずだ。香港経済は安定しており、福利厚生も良く、幸福だが満足感が足りないレベル。2日に逮捕されたのは学生が大半で511人なので、大半の香港人は実際に支持しないだろう。
――普通選挙の在り方をめぐり、政府案と民主派の案に大きく分かれるが、どちらを支持するか。
指名委員会で選ばれた候補者に有権者が一人一票を投じる政府案を支持する。政党によっては失業者でも立候補できる案があるが福利厚生ばかりが目的化し、均衡を保つことができないからだ。
――台湾の総統選挙は否定するのか。
台湾には台湾の、香港には香港の、各地域に合った選挙方法があると思う。台湾に関してはコメントできる立場にない。
――尖閣諸島(沖縄県石垣市、中国名・釣魚島)の領有権については、香港の急進民主派は実際に尖閣諸島に漁船で上陸するなど、香港の親中派の人々よりも、中国にとってより決死的で愛国的に見えるが、どうか。
民主派の支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会)でも民主党で釣魚島が中国領であることを主張することは支持するが、彼らの主張する愛国と愛港(香港を愛する)はイコールではない。民主派の主張は領土防衛にはなるが、一政党、一団体の主張が個別事案だけでは香港全体の共通する声ではない。
――1989年の天安門事件について中国政府は学生の動乱を鎮圧したとの立場を変えず、香港では支連会を中心に事件を再評価せよとの運動が展開されているが、事件は動乱だと考えるか、学生たちの民主化を求める声を弾圧したと見るか。
われわれは香港の生活について主に研究していて中国の25年前に起こった歴史については詳しくない。一部の証拠だけで断定できず、中国政府の主張と香港の民主派が主張する内容のどちらが正しいか、結論は出ていない。
(聞き手・深川耕治、写真も)











