愛国意識足りない民主派 「愛港之声」主席 高達斌氏
香港の普選運動 親中派民間団体代表の見方 (上)
香港の民主派が行政長官選挙の真の普通選挙を実現する案が受け入れられない場合、金融街の中環(セントラル)を占拠する運動を計画していることに対し、親中派の民間組織「愛護香港力量」や「愛港之声」は反対運動を展開している。両団体の代表に今後の対応について聞いた。(聞き手・深川耕治、写真も)

高達斌(パトリック・コ) 香港生まれ。香港理工学院卒業後、親政府派の新民党メンバーとなり、香港の親中派団体「愛港之声」召集人、同主席に就任。中国共産党深●(=土ヘンに川)市委員会統戦部が管轄する深●市海外聯誼会理事。61歳。
――6月10日、中国政府は突然、香港の一国二制度に関する初めての白書(一国二制度白書)を発表し、「香港の高度な自治は固有の権利ではなく、あくまで中央政府の承認と委任に基づく」と説明し、中国が香港を管轄統治する包括的な権限を持ち、香港の民主主義に限度があることを示したことで香港人の反発が予想以上に高いが、どう見るか。
発表したのは中国国務院(内閣に相当)の報道事務部門に当たる新聞弁公室(国内メディアの指導など担当)であり、法律の専門部署ではない。一国二制度は一国(中国)の国益と安全が優先されるという部分を解説し、香港に存在する反中国組織、国家を分裂させるグループに向けての白書だ。民主派の批判は愛国愛港(中国と香港を愛する)のうち、愛国の部分が不足している。
――同白書の起草に1年以上前から参与している北京大学法学部の強世功教授(香港マカオ研究センター執行主任)は植民地支配時代の香港は文明的で中国大陸は野蛮だとする「(香港優先の)香港本土主義」が香港で広がり、中国本土から香港を分離する政治的な動きが強まっていることを警戒しているが、香港人のアイデンティティーには中国大陸を蔑視する心理が働いていると思うか。
香港人全般、特に若年層の中国史に対する理解が浅過ぎることが原因だ。台湾を含め、領土に対して断固として妥協しないのは歴史認識の正しい理解が基礎となる。香港の学生会の一部で『反中国植民主義』という主張が出てきているが、香港は中国に回帰(返還)されたのであって占領したわけではない。英国旗や英国領旗を掲げて香港本土主義を主張する者さえいる。香港は返還後50年で中国の一都市になり、中国国民と何ら変わらない状態になるにもかかわらず、中国大陸の人々が香港の不動産を大量に購入する姿を見て、香港人は脅威に感じる場合もある。中央政府はそのような動向を憂慮し、白書の発表に踏み切ったのだと思う。
――香港市民や学生らで組織する民間団体「和平占中環(オキュパイ・セントラル)」が2017年からの普通選挙に有権者の一定の割合の支持があれば誰でも立候補できる「有権者指名」を要求し、模擬住民投票で79万人が投票したと発表した。有権者指名を受け入れられない場合、中環(セントラル)を占拠する計画を立てているが、「愛港之声」としてはどう対処していくか。
占中(オキュパイ・セントラル)が違法に行った模擬住民投票は79万票と言っても、連続10日間で年齢や制限がない無効な内容。しかも一人で何回でも投票可能なブラックボックスなので票数と正確な人数に大きな誤差がある。ましてやセントラル占拠は香港の金融機能が麻痺する違法な犯罪であり、香港経済を破壊する行為であることをマスコミ界、学界、法曹界、福利厚生界などに冷静に訴えて実行阻止に動いている。一部の若年層が暴走して香港経済を破壊することは容易だが、経済を再興させるのは大変な困難を伴うことを肝に銘じるべきだ。占中に参加しようとしている学生や若年層自身ではなく、その親たちに子供が犯罪行為に加担することを止めるよう忍耐強く説得活動をしている。現段階では参加希望者は少ないので、人民解放軍が出動することはないだろうが、強引な違法行為に対しては命の危険もあり、警察が逮捕・拘束するようになることを親に説明して理解を深めてもらっている。





