オバマ政権下で米軍の士気低下 ジェリー・ボイキン元国防副次官

リベラル政策を押し付け、反対する者は昇進見送り

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ジェリー・ボイキン 1971年、米陸軍入隊。特殊部隊「デルタフォース」創設時にその一員となり、後に陸軍特殊部隊司令官を務める。ブッシュ前政権で国防副次官(情報担当)を務め、2007年に中将で退役。現在、有力保守派団体「家庭調査協議会」の上級副会長。

 【ワシントン早川俊行】ブッシュ前米政権で国防副次官(情報担当)を務めたジェリー・ボイキン退役陸軍中将は、世界日報のインタビューに応じ、オバマ政権が米軍に課すリベラルな政策に反対する者は昇進が見送られ、多くの優秀な人材が軍を去っていることを明らかにした。また、同政権が政治的考慮を優先してアフガニスタン駐留米軍の交戦規定(ROE)を厳格化した結果、敵の攻撃に脆弱(ぜいじゃく)になり、「(現場兵士の)士気を著しく低下させている」と批判した。

 オバマ政権は米軍内の強い反対を無視し、同性愛者の入隊を全面解禁するなど、リベラルな社会政策を遂行している。これについて、ボイキン氏は「米軍は伝統的に極めて保守的な組織だったが、オバマ政権はこれをリベラルな組織へと変えようとしている」と断じた。

 その上で、「有能でもオバマ政権の政策を支持しない者は昇進が見送られ、自主的に軍を去っている。逆に資質が不十分でもオバマ政権の政策を支持する者は昇進している」と指摘。特に、大佐クラスなど将来、将官となるべき多くの中堅幹部が、オバマ政権下の米軍の方向性に失望し、辞めているという。

 また、オバマ政権は女性兵士を最前線の戦闘部隊に配属する方針を決定したが、これはフェミニスト勢力の要求に沿ったものだ。ボイキン氏は、男性兵士と同等の身体能力を備えた女性兵士は「ごくわずかしかいない」と断言。体力の劣る女性兵士を最前線に配置すれば、本人のみならず他の兵士をも危険にさらすことになると警告した。

 加えて、現場指揮官は少数の女性兵士のために、プライバシー保護に配慮しなければならなくなる。ボイキン氏は「戦場では敵を倒し、自分の兵士を守ることに集中すべきだ」と述べ、現場指揮官に余計な負担を課すべきではないと主張。最前線の厳しい環境下で、慰めを求める男女が不祥事を起こす危険性も指摘した。

 オバマ政権はアフガン民間人の巻き添え被害を減らすことを優先し、米軍のROEを厳格化した。この結果、最前線の兵士たちは武器使用が制限され、犠牲者が増加したとの報道もある。

 特に2011年、米軍の輸送ヘリが反政府勢力タリバンに撃墜され、精鋭の海軍特殊部隊SEALS(シールズ)22人を含む米兵30人が死亡する衝撃的な事件が発生。ボイキン氏は、輸送ヘリに随行した攻撃ヘリが敵を察知しながら、ROEの制約によって攻撃許可が下りなかったことが撃墜の要因だと指摘した。

 同氏は現役兵士・将校から直接、ROEに対する不満の声を耳にしていることを明らかにし、「司令部が優先しているのは政治的考慮と兵士の生命・安全のどちらなのか、という疑念が広がっている」と語った。その上で、「兵士たちの目には、オバマ大統領は戦争に勝つことよりも、(同性愛者の入隊解禁や女性兵士の戦闘部隊配属など)政治課題の押し付けを優先していると映っている」と述べ、最高司令官への不信感が募っているとの見方を示した。

 また、ボイキン氏は国防費の強制削減について、「弾薬や燃料、スペアパーツなど運用・整備費が削られ、訓練ができない状況に陥っている」と指摘。オディエルノ陸軍参謀総長が昨年、戦闘可能な態勢にある旅団は2個しかないと発言したことを挙げ、国防費削減による即応態勢の低下に強い懸念を示した。

 その上で、「同盟国が米軍の即応態勢に懸念を抱くのは当然のことだ。もし私が日本人なら、米国は本当に防衛義務を果たすのか、疑問を持つだろう」と語った。