大阪G20サミット閉幕、環境・経済で成果


プラごみゼロへ枠組み WTO改革で道筋

 大阪で28、29両日に実施された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、首脳宣言を採択して閉幕した。環境ではプラごみゼロへの枠組みを示し、世界貿易機関(WTO)改革への道筋を示した。一方で米中貿易摩擦では、米国が追加関税の先送りを表明、景気の下振れリスクが指摘されていた危機はひとまず乗り切った。(G20大阪サミット取材班)

宣言の実効性確保が重要
対中友好アピール 間違ったメッセージにも

 「世界は結束できる、そう信じて、精いっぱい、議長役を務めてまいりました」。安倍晋三首相は、サミット閉幕後の記者会見でこう力説した。

安倍晋三首相

6月29日、G20サミット閉幕後の会見で演説する安倍晋三首相(外務省提供)

 その「結束」を脅かしてきた要因の一つは、米中貿易摩擦だ。首相は、世界経済に依然として下振れリスクがあると指摘した上で、「自由、公正、無差別、開かれた市場、公平な競争条件、こうした自由貿易の基本的原則」を加盟国の間で確認したと、サミットの成果を強調した。

 不公正な貿易慣行、知的財産権の侵害などが指摘される中国に対してくぎを刺すと同時に、米トランプ政権の保護主義をいさめることを狙った苦肉の策だ。

 また、共同宣言では、米国への配慮から、前回のブエノスアイレスでのサミットに続き「保護主義と戦う」という文言は盛り込まれなかった。

 中国の習近平国家主席に対して首相は、来年春の国賓としての来日を要請、中国側も受け入れの意思を示した。中国としては、貿易で圧力を強める米国を牽制(けんせい)するカードとして日本との関係改善をアピールする狙いがある。

 だが一方で、尖閣諸島周辺海域への中国公船の侵入が常態化し、日中中間線付近での一方的なガス田開発も進められるなど、中国は日本への敵対的な姿勢を崩していない。友好ムードをアピールするばかりでは、中国に間違ったメッセージを送ってしまう可能性がある。

 一方、日米首脳会談で両首脳は同盟関係のいっそうの強化で一致。首相は、「短期間にこれだけ頻繁に日米首脳往来があることは強固な日米同盟の証し」と「蜜月」ぶりをアピールした。中国、北朝鮮を牽制する上で日米関係の強化は不可欠だ。

 また首相が重視してきたWTO改革では、「グローバル化、デジタル化といった近年の動きに、WTOは必ずしも対応できていない」と指摘、「新たなルールづくり」の必要性を強調、そのため「大阪トラック」の開始を宣言した。「データは21世紀の石油」とまでいわれる。急速なIT(情報技術)の発展に対し、各国の法整備も追い付いていない中、国際的なルールづくりで一定の指針を示したことの意味は大きい。

 サミットの主要課題であった環境でも成果があった。プラスチックごみの海洋への新たな流出を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を加盟国間で共有した。プラごみについては、各国で対応の方法に違いが出てくるのは当然だが、流出阻止へ継続して取り組んでいくことが不可欠だ。

 一方で、トランプ氏の予測できない言動に振り回されたサミットでもあった。トランプ氏はサミット直前、日米安全保障条約の「片務性」を指摘、日本政府は対応に追われた。

 米中首脳会談では、対中追加関税第4弾の見送りを表明。同時に、安全保障上の懸念から中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)に課していた禁輸措置について、限定的な解除を発表、世界を驚かせた。

 サミット閉幕翌日の各紙は、大部分が対中追加制裁の先送り、ファーウェイへの制裁の緩和が1面トップを飾った。30日に急遽(きゅうきょ)行われた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談も話題をさらった。

 08年から実施されてきたG20サミットは長らく形骸化が指摘されてきた。だが「世界経済の8割を占めるG20」(首相)の首脳が一堂に会する意味はある。採択された「大阪宣言」を実効性のあるものとしていくことが重要だ。