審査会で党改憲案の議論を 加藤勝信氏

インタビューfocus

臨時国会にどう臨む

自民党総務会長 加藤勝信氏

 自民党の加藤勝信総務会長(衆議院議員)はこのほど、本紙のインタビューに応じ、自民党が作成した改憲案を今臨時国会の憲法審査会で議論することを求めるとともに、北朝鮮による拉致問題の解決に向けて引き続き尽力していく考えを強調した。(聞き手・早川一郎政治部長、写真・加藤玲和)

加藤勝信氏

 かとう・かつのぶ 1955年生まれ。衆議院当選6回。79年、東大経済学部卒。同年4月、大蔵省入省。2003年、衆議院議員初当選。15年、一億総活躍・拉致問題・女性活躍担当大臣。17年、厚生労働大臣、働き方改革・拉致問題担当大臣などを歴任。

安倍晋三首相が「次の国会に党の改憲案を提出する」と繰り返し表明してきたが、それを受けての総務会長としての意気込みは。

 自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消・地方公共団体、教育充実の4項目の改正案を作り対応していくことについて、今年の党大会で了解を頂いた。それに沿って、憲法改正推進本部でイメージ案を作った。それを踏まえ、国の機関である憲法審査会の場を通じて、他の政党に対し、自民党としてはこういう考え方を持っているということを説明しながら、しっかり議論を進めていきたい。

党の改憲推進本部が、イメージ案でなく、具体的な条文作りをし、それを憲法審査会に持っていくということはないか。

 国会がこれから始まる。体制も変わるので、その中でいろいろな判断があるのかもしれないが、イメージ案は、憲法審査会での具体的な議論に資するとして取りまとめられたものと認識している。

総務会は党の最終的な意思決定の場だが、総務会として議論をする予定はあるか。

 国民投票法には、「発議」という言葉が2回出てくる。最終的に国会が国民に対して「発議」して国民投票に入るという憲法改正の「発議」と、議案の提出という意味での憲法改正原案の「発議」がある。後者の、通常であれば法案の提出に当たる発議の状況になれば、提出者に加えて衆議院100人、参議院50人の賛成者でやるのか、あるいは憲法審査会長の提案でやるのか幾つかパターンがあると思う。いずれにしても自民党として対応するに当たっては、当然総務会の承認を得なければならない。ただ、今そういう状況に来ているわけではない。また、新たなメンバーでの総務会がスタートするので、総務の皆様ともよく相談をしていく。もちろん国会での議論をしっかりしてもらいながら、党の中でも憲法改正推進本部や総務会で必要な議論がなされていく。これは大事なことだと思う。

首相の言う国会に提出するという意味は。

 提出という意味がかなり幅広い。議案を提出するという意味で総理がおっしゃっているのではない。「発議」という意味ではなく、あくまでも国会での議論、特に憲法審査会での議論に資する、あるいはそこでの議論を進めるために自民党の考え方を示していくということだ。

 残念ながら、前国会では憲法審査会でほとんど議論がなされなかった。審査会そのものが開かれなかった。まずそういう場でしっかりと議論をしていく。国民投票法の改正もある。それに向けて、それぞれ担当者が汗を流し努力していくということだ。

審査会に出てこない野党への注文は。

 憲法という大事な問題について、憲法審査会で、いろいろな観点から審議していくことが基本だと思う。議論しないとおかしいという機運を盛り上げていくことも必要である。 ――総務会としての議決は全会一致か多数決か。

 それは先の話だが、基本的に自民党総務会の決定は出席者の全会一致でなされてきた歴史がある。それをしっかりと踏まえる必要がある。

「拉致」解決に向け活動続ける

安倍首相が少子高齢化を国難と位置付け、全世代型社会保障や子育て世代への大胆な投資などを打ち出したが、有効な具体策となり得るのか。

 昭和22年から24年の間に毎年約260万人が生まれた。この5年間は、ボリュームのある団塊の世代が65歳を超えた時期だ。15歳から64歳の生産年齢人口は大きく減少したが、他方、就業人数は増えている。仕事をする65歳以上の高齢者と女性が増加している。さらには、環境さえ整えば仕事をしたいという女性や高齢者は何百万人といる。そういう方々が仕事をされていくということは経済の成長にも大きく資する。明るい将来が見えてくれば、若い人たちが結婚して子供を産みたいという思いの実現にもつながっていく。

 20年近いデフレで、経済が停滞し、場合によっては給料が下がる、雇用もどうなるか分からない不安が続いてきたが、今その流れは大きく変わろうとしている。この基調を続けていくためにも、さらに子育てや介護しながら働けるための取り組みをしっかり進めていくことにしている。

 もう一つは、人生100年時代において、高齢者の方をはじめ健康管理をしっかりやってもらい健康寿命を伸ばすとともに、意欲ある高齢者が働き続けられるようにしていく。本人の生活の質を上げるとともに、医療や介護の費用も抑制していく流れを作り上げていく。高齢化社会に対するトータルな取り組みを日本が率先して示していくことが重要だ。

安倍首相は「戦後外交の総決算」にも意欲を示しているが、北朝鮮による拉致問題解決の見通しは。

 私も3年間拉致問題担当大臣を任されながら、残念ながら拉致被害者の帰国の実現はもとより、それに向けての具体的な道筋をつくり出すことができなかった。帰国したいという希望を持ちながら帰国できない拉致被害者の方々、そして帰国を待ち望みながら一年一年、高齢化されていくご家族の方々、また支援されている方々に対して申し訳なかったという思いを強く持っている。

 先般の米朝首脳会談などを契機として、北朝鮮をめぐる状況が変わる動きが見えてきた。総理は最終的には日朝首脳会談を行い拉致問題の解決を図っていきたいとおっしゃっている。ただ、これまでの経験からして焦ってはいけない。確実に帰って来れる見通しをつくりながら、首脳会談を経てすべての拉致被害者が1日も早く帰国できるように、党の立場でも1議員としても、引き続き活動していきたい。