「自由民主」の衆院選検証 ポピュリズム煽るTVに警鐘

政局報道で立憲に票が集中

 衆院選後の自民党の機関紙「自由民主」は、選挙結果を受けた「第48回総選挙分析と検証」を国際医療福祉大学医学部総合教育センター教授の川上和久氏に委ね、11月7日号と同14日号で上・下の連載をした。上は小池百合子東京都知事と希望の党を焦点にした「ポピュリズムの失速」(見出し)、下は立憲民主党を焦点にした「護憲ポピュリズムの危険性」(同)だ。

 前者では、「無党派層の比率が4割にも達する中、固い支持基盤を持たず、一定以上の支持を得られない政治勢力が、政権の形を示すよりも、ポピュリズムを煽ろうと試みる。今回の総選挙の主役となったポピュリストが希望の党の小池百合子代表だった」と述べ、希望の党よりも小池氏の振る舞いを問題視している。

 同氏は、都知事選、都議選で自民党を負かした小池氏の「命取りとなったのは、国政レベルでの政策が生煮えのまま、自らへの世論の支持で安倍政権を倒せるのではないか、との慢心」と断じた。さらに「満身創痍の民進党」の「希望の党へのまるごと合流」で「慢心」は頂点に達したが、民進党リベラル系「排除」など「『安倍一強打倒』といいながら、その方法論は極めて独善的」で「急速に歯車が逆に回りだした」…など批判を並べた。

 小池氏は都議選直前まで自民党員だったが、国政選挙でも新党を作り、しかも野党と奇策に出て政権獲りに挑んだとあって完全に仇敵扱いになった。

 選挙結果については、「ポピュリズムの失速で、固い支持基盤を持つ自公両党の堅実な得票が、得票率を押し上げた。自民党は比例代表で約1856万票。公明党は約698万票。…自公合わせて約2554万票は、2014年を上回る得票数だ」と分析。勝因は第一に敵失ということだ。加えて、北朝鮮の脅威、アベノミクスで経済成長などの政策の評価を挙げている。

 同連載・下は、比例票で立憲民主党の1108万4890票、希望の党の967万7524票を合わせて2000万票を超えていることについて、無党派層に影響するテレビ報道の報道時間(報道量)に着目。ポピュリズムとテレビとの関係を危惧している。

 川上氏は「テレビ報道の報道量を算出している株式会社エム・データに、衆院の解散から投開票日の前日までのNHK、民放の総選挙に関する報道量を算出してもらった」として、「総計では、243時間15分。2014年総選挙の78時間20分の約3倍」と報告。背景に、「民進党が希望の党に合流するというサプライズ」などが「『ニュース価値』として繰り返し取り上げられた」と指摘した。

 その上、「テレビは、新聞以上に『政策報道』を苦手」とし、「勢い、テレビ報道は政局中心になる」中で、「筋を曲げずに袂を分かった」立憲民主党の「分かりやすさがテレビで腑に落ちるように報道しやすく」、「ソフトリベラルのポピュリズムが、受け容れられやすかった」と見た。同紙は憲法改正論議を控え、同連載で今後の護憲ポピュリズムを警戒している。

編集委員 窪田 伸雄