9条論で自家撞着の共産

 この原稿が紙面に掲載される頃には、今回の衆議院選挙の結果はほぼ確定しているだろう。

 ここで結果についてとやかく論評する気はない。

 ただ選挙期間中、日本共産党や社民党が、相変わらず日本国憲法(第9条)改正反対の主張を繰り返していたことには違和感を覚えた。

 昭和21(1946)年の憲法制定議会で、日本共産党や社民党(当時は社会党)が、どのようなスタンスで日本国憲法に向き合っていたかを、この2党の国会議員が知らないはずはないのだが……。また、選挙期間中、駅頭で街頭演説していた日本共産党候補者の運動員(党員)に、私の疑問をぶつけてみても、明確な返事はなかった。

 ちなみに日本共産党は、憲法制定議会で日本国憲法に反対した唯一の政党である。施行されてから今日まで、一度たりとも日本国憲法に賛成を表明していない。

 そして、日本共産党は昭和21年6月28日に「日本人民共和国憲法(草案)」を決定。天皇制を廃止し、自前の軍隊を持つ人民共和国国家を樹立することを目指していた(現在も変わらない)。

 同年6月25日、吉田茂首相が衆議院本会議で、第9条の提案理由の説明を終えた後、日本共産党の幹部だった野坂参三氏は次のような質問をしている。

 「戦争には、我々の考えでは、二つの種類の戦争がある。一つは不正の戦争で、他国征服、侵略の戦争である。これは正しくない。同時に、侵略された国が自国を守るための戦争は、我々は正しい戦争といってさしつかえないと思う。いったい、この憲法草案に戦争一般抛棄(ほうき)という形でなしに、これを侵略戦争の抛棄、こうするのがもっと的確ではないか」

 野坂氏の質問内容について、志位和夫委員長をはじめとする日本共産党幹部が知らないはずがあるまい。野坂氏の質問と、日本共産党の第9条改正反対という主張は、明らかに矛盾してはいないか。

 是非とも志位委員長には、安倍晋三首相との憲法論戦の場で、矛盾を説明してもらいたいものだ。

(濱口和久)