混乱や厳しい交渉覚悟を


アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員 加瀬みき

加瀬 みき

 トランプ大統領が安倍首相を迎えた様子は、大統領の得意の言葉を用いれば「トリメンダス(途方もない)」な大歓迎ぶりだった。

 首脳会議の成功はトランプ氏にも絶対に必要であった。過激な政策を約束し、大統領に選出されたが、移民政策が裁判所に施行停止を命じられたことで、大統領権限の限界を知った。また北大西洋条約機構(NATO)を無用の長物と呼び、日本などの同盟国に脅しを掛け、アメリカの利だけを求める政策を目指したものの、国際関係は多面的で、独り勝ちはほぼ不可能であること、そして友達が必要であることも理解せざるを得なくなってきた。

 しかし、トランプ政権内でアジア政策がきちんと論じられているわけでもなく、誰に決定権があるのかもまだ分からない。その上、集中力がなく、自分に都合の悪いことは嘘(うそ)として扱う大統領である。その日の気分でどう政策が変わるか分からない。

 はっきりしているのは、今のところバノン首席戦略官・上級顧問とナバロ通商担当補佐官がアジア政策の手綱も握っていること、そして2人の焦点は対中政策であることである。対中経済・貿易交渉のために日本との関係も利用される可能性がある。良いスタートを切った日米関係だが、相当の混乱や厳しい交渉も覚悟せざるを得ない。