「日米蜜月」時代の再到来


個人的信頼を固めた両首脳

 安倍晋三首相とトランプ米大統領による10日の首脳会談は、「日米蜜月」時代の再到来を予感させるものとなった。予測不能なトランプ氏の言動が世界に不確実性をもたらしているだけに、首相がトランプ氏と個人的な信頼関係を築き、日米関係のさらなる強化へ道筋を付けた意味は限りなく大きい。

 「私たちは非常に気が合う。もしそれが変わったら知らせるが、そうならないと思う」

 共同記者会見でトランプ氏は、上機嫌で首相との相性の良さを強調。首相を出迎えた時、握手だけでなくハグまでしたことを明かし、「そういう気持ちになったからだ」と、首相に親近感を抱いていることをアピールした。

 首脳会談で、トランプ氏が日本に対する「核の傘」提供や沖縄県・尖閣諸島への日米安保条約適用を確認したことは大きな成果だ。だが、それ以上に大きいのは、個人的な信頼関係を固めたことだろう。会談に続き、フロリダ州パームビーチでゴルフを共にすることで、両首脳の絆はさらに深まるとみられる。

 日米関係が「蜜月」と呼ばれた時代は過去にもあるが、いずれも首脳間の個人的な信頼関係が土台になっている。「ロン・ヤス」の愛称で呼び合った1980年代の中曽根康弘元首相とレーガン元大統領、2000年代の小泉純一郎元首相とブッシュ元大統領がそうだ。

 安倍首相とトランプ氏もこれに続く蜜月関係となる可能性が高い。オバマ前大統領とも良好な関係だった安倍首相は「2代続けて米大統領と緊密な関係を築く初めての首相」(アメリカン・エンタープライズ政策研究所のマイケル・オースリン日本部長)となる。

 首相は記者会見で「強い米国となることは日本にとっても大きな利益だ」と述べ、「米国を再び偉大にする」と訴えるトランプ氏の主張に理解を示した。超大国としての米国の地位を否定的に捉え、国防費を大幅に削減したリベラルなオバマ氏よりも、米軍再建に取り組むなど「強い米国」を志向するトランプ氏の方が、日米同盟の抑止力を強化して地域の安定を維持しようとする首相の戦略に合致していると言える。

(ワシントン早川俊行)