民共連携は今後も続く 筆坂秀世氏

インサイト2016

元日本共産党書記局長代行 筆坂秀世

 共産党は、先の参院選挙で、選挙区、比例で6議席を獲得した。改選議席がわずか3議席だったので、倍増ということになるが、共産党にとって手ばなしで喜べる結果ではなかった。

筆坂秀世

 3年前の参院選では、選挙区で3議席、比例で5議席、合わせて8議席を確保していた。また同党が掲げた目標は、比例で「850万票以上、15%以上」を獲得して、「8議席の絶対確保と9議席への挑戦」ということであった。結果は、約600万票、得票率約10%、獲得議席5議席であり、目標を大きく下回った。

 選挙区では、「全国13都道府県の定数2~6議席の複数区のすべてで議席獲得」を目標に掲げていたが、結果は東京の1議席だけであった。

 この結果は、大方の予想を裏切るものだった。なぜこれほど伸び悩んだのか。

 共産党が民進党などに選挙協力を呼び掛けた「国民連合政府」構想は、安全保障法制廃止の一点での共同を、というものだった。共産党は、周知のようにこの法制を「戦争法」と決めつけてきた。しかし、安保法制は、わが国と密接な関係にある国への武力攻撃が発生し、それによってわが国の存立が脅かされるという限定的な条件のもとでの集団的自衛権の行使を容認するものであり、国際法上違法とされる戦争とは、まったく無縁のものである。

 これを「戦争法」などと呼ぶのは、世論を誤導するレッテル貼りに過ぎない。

 レッテル貼りはこれだけではない。もっと低劣なレッテル貼りが選挙期間中にも行われた。それが藤野保史政策委員長(当時)による自衛隊の予算は、「人を殺すための予算」というテレビでの発言だった。

 軍隊が人を殺傷する能力を持っていることは、古今東西、自明のことである。国を防衛し、国民の生命、財産を守るには不可欠だからだ。共産党は慌てて藤野氏を更迭し、「自衛隊予算を全部削れと言っているのではない」と弁明したが、この程度の人物が政策の責任者だというのだから、世間があきれたのも当然である。

 また、「アベ政治を許さない」というプラカードも全国で見られた。「アベ政治」とは何か。なんの説明もない。

 安倍政権は、同一労働同一賃金や女性の活躍、待機児童解消にも精力的に取り組んでいる。これも「許さない」とでも言うのだろうか。

 要するに、すべて反安倍の政治的雰囲気を醸成するために行っているのである。だがこれは、ファシズムの手法であり、危険なものである。

 この根底には、この程度のレベルの低い決めつけによっても、国民を誘導できると思う侮りが横たわっている。

 これこそが共産党が伸び悩んだ大きな原因の一つである。

 参院選での民進党の結果は、上出来であった。政権党であった6年前と比較すれば減らしたが、大惨敗を喫した3年前と比較すれば、比例で約400万票増やし、野党統一候補を立てた32の1人区のうち11選挙区で自民党に競り勝った。その結果、全体では15議席増やしたことになった。間違いなく野党統一というやり方は、大きな力を発揮したということだ。

 だからこそ、現在行われている東京都知事選挙でも、民進党執行部は野党統一候補を立てることに拘ったのである。共産党ももちろんそうである。民進党内には、共産党との共同に依然として抵抗する勢力も存在するが、今回の結果を見る限り、衆院選でも続けざるを得ないだろう。