自主憲法なく戦後は終わらず 桜田 義孝氏
桜田 義孝 衆議院議員に聞く
7月予定の参院選では改憲勢力が3分の2の議席を確保できるかどうかが大きな焦点となる。改憲推進派の一人、自民党の桜田義孝衆院議員(同党行政改革推進本部長)は本紙のインタビューに応じ、「自主憲法の制定なくして戦後は終わらない」と強調した。(聞き手=政治部・武田滋樹、山崎洋介)
現在の憲法は占領時に制定され、70年間も改正されていない。

さくらだ・よしたか 昭和24年千葉県生まれ。明治大学商学部卒業。同51年、桜田建設創立。柏市議会議員(2期)、千葉県議会議員を経て平成8年、衆議院議員選挙で初当選。現在6期目。内閣府、文部科学各副大臣、自民党副幹事長などを経て現在、同党行政改革推進本部長。
現憲法が現実にそぐわないということは、みな理解している。しかし、なんとなく定着しているではないか、今まで何か不具合があったのか、という人もいる。だから、憲法改正の機運が盛り上がらない。なぜ現状、実情に合わないのか、もっと議論すべきだ。
また、占領下に日本国憲法が制定されたことについては、もう少し日本人は冷静に認識し、見詰め直すべきである。自主憲法制定が自民党の結党以来の党是であって、それは今も変わりはない。
自民党は全面的な憲法改正草案を持っているが、どの部分の改正が重要だと考えるか。
まずは前文だ。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して(、われらの安全と生存を保持しようと決意した)」というが、日本の周辺国のどの国を信頼するというのか。中国か、北朝鮮か、ロシアか。日本の周辺に真に信頼できる国はない。米国と韓国は安全保障上の利害関係は共通だが、北朝鮮は全然違う。
9条も改正すべきだ。国を守るのは、陸海空の自衛隊の存在を抜きにして語れない。陸海空の戦力を持たないというのはあり得ず、全く現状にそぐわない。自衛隊という文言は今の憲法にないが、しっかり(憲法の中に)位置付けるべきだ。自民党の改正草案は「国防軍」としているが、私も基本的に国防軍の方がいいと思う。
他には、憲法の中に私学助成禁止の条項がある。しかし今は、官民格差の解消、教育のチャンスの平等ということで私学支援を国費で行っている。この条項もやはり現状にはそぐわない。
今度の参院選でそこの辺りを強く訴えるべきか。
前文、9条、私学助成など、あれもこれも改正しましょうとなると、国民も何をされるか分からないと思ってしまいかねない。まずは、非常事態条項の盛り込みだ。テロ、大災害が起きた時にどうするか、国民の最大多数の生命、財産を守るために多少の我慢をしてもらわないといけない状況もあり得る。いつ首都直下型地震があるか分らかない。災害対策が最優先だ。その上で尖閣諸島に中国が攻勢をかけた時も含め、防衛と災害の両方の非常事態に対処できる憲法にすべきだ。
この「非常事態」で改正を実現させ、9条の改正は第2ラウンドに行う。9条から手を付けると反平和主義者との誤解が出て、まともな議論にならなくなってしまう。「家族」という文言を取り上げることも必要だと思う。
民進は改憲に主体性持て
ただ、参院選では、憲法改正を前面に出すとむしろマイナスだと思う。民進党の中にも、現在の憲法は時代に合わないのではないかという認識を持っている人がたくさんいる。野党第一党の良識ある人たちと共通の議論のテーブルについて、改正を進めていくことが肝要だと思う。
民進党の岡田克也代表は安倍内閣での改正には応じない姿勢だ。
憲法を改正しようとすると岡田代表のように言い始める人が出る。では、自分の内閣ならいいのか。共産党は別だが、保守思想を持った政党なら、日本のどの政党(の政権)になっても、日本のあるべき姿を示すものとして自主憲法の制定が国民の総意の下に行われるべきだ。
世界の常識の中で国防を考える場合は、やはり自主憲法の制定は避けられない。自主憲法の制定なくして戦後は終わらない。
参院選を控え民進党は共産党との選挙協力を進めている。
民共が一緒になってどうするのか。共産党は日米安保反対、自衛隊を解体するという考えだ。民進党は同じ方針を取るのか。“民共合作”というのは政策なき野合だ。もし合作をやるというのなら、政策を一致させてから政権構想を描くべきだ。
共産党は自分の候補を下ろしてもいいと言っている。そういう共産党の高等戦術、正々堂々と主義主張を語らない戦術に民進党がのまれていくことを私は恐れている。民進党にはもっと主体性を持ってもらいたい。憲法改正反対などと言っているようではダメだ。










