不毛の9条論議やめ2項を正せ
憲法改正 ここが焦点(4)
第3代統合幕僚長 折木良一氏(下)
安保法制も憲法のギリギリのところに位置するので、現場としては判断に悩む状況が生じる可能性がある。やはり憲法改正は必要か。
憲法第9条2項の解釈について学者も含め何十年も議論されているにもかかわらず、いまだに結論が出ていない。こんな憲法はない。国防というのは、国が存立するための必要最低限のことだから、「実力組織はきちんと持つ。何かあったら最小限のことはやる」というのは、明文化してしっかり書き込むべきだ。そうすれば、2項のところでずっと悩むことはない。
憲法を改正しようとするなら、日本の国防はこうあるべきだというコンセンサス作りを急がないといけない。
その通りだ。その点でマスコミや国民は混乱していて、特に防衛政策についてのコンセンサスがずっとない。どういう見方でもできるようになっていた。ある時には政策的な駆け引きとして使われ、ある時は特別措置法の下で実際に運用されてきた。そういった中で、自衛隊は事故もなくここまで来て評価をいただいているが、本当は防衛や国際貢献はどうあるべきかというコンセンサスを積み上げて、憲法改正に繋(つな)げるべきだ。
敗戦後、すぐに憲法を作って、改正条項はあるが改正せずに混乱した状態のまま引っ張ってきた。やっと今、周辺の安全保障環境の現実を見ながら、日本の憲法論議、安全保障論議はやっぱり少しおかしいなと国民は思い始めていると思う。
自民党の改正草案では「国防軍」と規定している。自衛隊と軍ではどういう違いがあるか。
それは日本国民にとっての違いだけの話で、海外では一般的に軍と同じだと思われている。ただ、警察予備隊を創設の源とする自衛隊と本来の軍との違いということになると、軍事裁判所の設置や権限の問題などの規定やハード面で法律を変える必要があるし、自衛官の名誉や身分保障といったソフト面でも明確にすべきだ。個人的には、名称は「軍」で良いと思っている。要するに位置付けだけの話だと思っている。
自衛隊が軍になっても専守防衛は変わらないのか。
当然のことながら平和主義は貫かれるだろうし、よその国に行って戦争するということは絶対ないし、日本周辺で守るという姿勢は基本的に変わらない。ただ、専守防衛という言葉を使うかどうかは議論してもらわないと困る。
最後に、南シナ海における中国の動きに対し、周辺諸国は自衛隊のプレゼンス強化に期待を寄せているが。
ASEAN(東南アジア諸国連合)などには今回の安保法制を評価してもらっているし、日本の姿が見えることを心強く思っているようだ。南シナ海は客観的に見てもシーレーン上大事な所だし、国際的にきちんと管理されるべきだ。ただ、挑発的なことをやろうということではない。ベトナムのカムラン湾やフィリピンへの自衛艦寄港はこれまでもやっていることだ。パシフィック・パートナーシップで米軍と一緒にベトナムに入ったり、医療部隊による医療支援を実施したり、東ティモールやフィリピンに寄ったり、いろんなことをやっている。今回は練習艦隊の寄港でそれはそれで意義があり、日本側の姿が変わりつつあるのは確かだ。
(聞き手=政治部・小松勝彦、山崎洋介)






