「自由民主」の改憲推進 党案より国民投票を意識

「多くの政党の合意」強調

「自由民主」の改憲推進

改憲派の「新しい憲法をつくる国民大会」で発言する船田元・自民党憲法改正推進本部長=3日、都内

 自民党の機関紙「自由民主」5月5・12日合併号は、1面に「立党60年 憲法改正を強力に推進」の見出しで「船田元党憲法改正推進本部長に聞く」を掲載した。

 「昨年、改正国民投票法が施行され、憲法改正への環境整備が整いました」との問い掛けに、船田氏は「少なくとも2年後の(平成)29年あたりを目標に1回目の国民投票が実施できればというのが本部長としての思いです。今年の臨時国会、あるいは来年の通常国会中に最初の憲法改正のテーマを絞り込み、改正原案が分かってくるという状況がいいのではないか」と述べている。

 また、改正原案については改憲発議に必要な衆参の総議員3分の2以上の賛成を念頭に「できるだけ多くの政党の合意と参加が必要」で、「わが党の憲法改正草案をすべて俎上に上げるのはなかなか難しい話」であり、これまで憲法審査会で「多くの政党から緊急事態や新しい人権、財政規律について言及があり」、「そのあたりから議論が進んでいく」と見通した。

 さらに、「9条の改正については、世論を二分する重要な問題ですので、相当時間をかけて慎重に議論をしていかざるを得ないでしょう」との認識を示した。

 国会で憲法論議が始まったのが、2000年の衆参両院における憲法調査会設置からだが、以来、憲法改正の環境を整えて改正原案の検討に着手するまで15年を要した。この間、自民党は新憲法草案(05年)、日本国憲法改正草案(12年)を発表、これを「自由民主」で報じたが、これらは立党50年や下野しての原点回帰など憲法改正を期する立党精神論に基づく党及び支持者向けのアピールだった。

 これが国民向けになった。同紙が「わが党は今年3月の党大会で『国民各層の幅広い理解を得つつ、憲法改正を推進する』と明記した運動方針を採択した」(リード)と指摘するとおり、多党間合意と国民理解に運動方針を据えたわけだ。

 「自由民主」5月19日号では2面に「各地で憲法改正推進大会」の見出しで、新憲法制定議員同盟が5月1日に開いた「新しい憲法を制定する推進大会」、新しい憲法をつくる国民会議が3日に行った国民大会、さらに党憲法改正推進本部が作成した漫画政策パンフ「ほのぼの一家の憲法改正ってなぁに?」などを紹介した。両大会には船田氏らも登壇している。

 ただ、現憲法施行後60年以上も改正手続きを定めた96条の法整備がされない異常な状態に我が国はあったほどだ。戦後長らく「改憲=戦争・軍国主義」「護憲=反戦・平和主義」というレッテル張りが世論を席巻(せっけん)しただけに、挽回の労を要するだろう。

 この流れを変えるには、国会が正真正銘の国権の最高機関として、国の基本法である憲法について立法活動をするという各党政治家の意識改革が必要だ。また、改憲は“戦争をするため”ではないし、国民主権を証しするものである。

解説室長 窪田 伸雄