【社説】立民総括案 まとまりない党の了承先送り


立憲民主党の泉健太代表

 立憲民主党は、共産党などと選挙協力した昨年の衆院選挙結果を「敗北」として選挙戦略を見直す総括案を常任幹事会で諮ったが、了承に至らず先送りにした。

 小選挙区で得た共産票の影響の大きさに翻弄(ほんろう)され、選挙が終わって約3カ月が経(た)つにもかかわらず総括できない党のまとまりのなさは見苦しい。

共産との共闘に未練

 総括案は、共産と合意した「限定的な閣外からの協力」に対する有権者の印象、共産との連携で生じた離反票を分析した。狙いは「中道の立ち位置までウイングを伸ばし、幅広いアプローチを展開していく」ため、共産との協力は「今後は慎重に対応する」ことにあろう。

 昨年10月31日投開票の衆院選に立民は政権交代を訴えて共産、社民党、れいわ新選組と「野党共闘」で臨んだものの、公示前の109議席から96議席に減らす結果となった。敗退は明らかだが、今なお今夏の参院選に向けて1人区での野党候補一本化を模索していることが総括先送りの一因だ。共産票への期待が根強い。

 総括案は、1万票以内の僅差で敗れた小選挙区のうち共産との野党共闘を理由に投票先を立民候補から他の候補に変更した割合は3%余りであり、「接戦区で勝敗に影響を与えるだけの程度」を示したとし、比例代表でも全体の約5%が他の党に投票先を変更したとして「一定層の離反」を認めている。共産票の恩恵を受けた議員がいたとしても、数字を直視すれば共産との共闘では野党第1党として悲願の政権交代はあり得ない。

 ところが、常任幹事会では「候補者一本化を否定しているように受け取られる」など異論が続出して、了承を得られなかった。もともと小選挙区制度導入は政策選挙を本分として政党同士の切磋琢磨(せっさたくま)による選挙を実現させる目的があった。

 立民に合流したのは、自民党から政権を奪った細川護熙政権で選挙制度改革を推進した政治改革派だったはずであり、共産を交えた候補者一本化は本末転倒である。中道にウイングを広げるには、政策第一に立ち返るべきであり、共産主義体制を目指し基本政策が異なる政党を峻別(しゅんべつ)するのが筋だ。

 また、共産との限定的閣外協力の合意について「誤解となって有権者に伝わってしまった」と指摘するのであれば、共産に政権交代の連呼を許した問題がある。共産は衆院選を「党の歴史で初めて政権交代に挑む選挙だ」と街宣や機関紙で日々触れ回った。選挙における他党との共闘も党利党略だ。「野党連合政権」を標榜(ひょうぼう)して政権交代を叫んだ共産の情宣力にも負けたと言えないか。

 民主党政権以来の宿痾

 衆院選直後に共産との共闘を進めた枝野幸男氏が敗北の責任を取り党代表辞任を表明。代表選が行われて泉健太氏を選出したが、共産との共闘路線の方針転換もしていない。

 その上、選挙の総括もできないのは党内抗争による民主党政権崩壊以来の宿痾(しゅくあ)とも言えるまとまりのなさで、共産票上乗せのうま味が「病膏肓(こうこう)に入る」状態に陥らせている。