【社説】国交省書き換え 政策への不信招きかねない


建設工事受注動態統計のデータ書き換えを認め、陳謝する斉藤鉄夫国土交通相=15日午前、国会内

 建設業の毎月の受注動向を示す「建設工事受注動態統計」について、国土交通省が調査票を書き換えて二重に計上し、2013年から過大に推計されていたことが明らかになった。

 統計に基づく政策への不信を招きかねない事態である。政府は実態解明を急ぐとともに再発防止を徹底すべきだ。

法に抵触する恐れも

 今回問題が発覚した統計は、建設業者が公共機関や民間企業などから請け負った工事の実績を集計するものだ。国内総生産(GDP)の推計などに活用され、中小企業庁の支援制度で対象の「不況業種」を選定する判断材料ともなる。政府が特に重要と位置付ける53種類の基幹統計の一つで、全国の建設業者約1万2000社が提出する調査表を毎月、集計している。

 ただ調査表はまとめて数カ月分が届くことも多く、この場合は数カ月分の受注実績を合算して最新の1カ月分として計上していた。各月の数字は実態を反映しないものになるが、国交省は調査票を集める都道府県に対し、受注実績を書き換えるよう指示していた。

 さらに13年度から、他の業者の実績から算出した推計値を計上する手法が導入された。このため、推計値に加え、その後に合算した実際の受注実績が二重に計上される状態になった。18年12月に毎月勤労統計で不正が判明した際、統計結果を一斉点検したが、建設統計の二重計上は改められなかった。

 統計は経済分析や政策立案の大前提になっている。書き換えや二重計上が行われていたとは耳を疑うばかりだ。統計の重要性に対する認識が不足していると言わざるを得ない。

 基幹統計は意図的に虚偽のものを作成するなどした場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。書き換えが法に抵触するか徹底的な調査が求められる。

 書き換えをめぐっては、問題を指摘した会計検査院の報告書が発表された今年9月になっても、国交省の事務方が当時の赤羽一嘉国交相に直接報告していなかったことが分かっている。20年1月分からの集計方法変更も報告せず、公表もしなかった。

 事務方は19年11月に検査院からの指摘を受け、都道府県への書き換え指示撤回などを現場の判断で進めた。書き換えの隠蔽(いんぺい)を図ったとしか考えられない。

 問題を受け、国交省は20年1月まで遡って再集計した。しかし、2年間の保存期間を過ぎた19年分以前のデータについて数値の修正が困難になっている。通常は期間経過後1年程度保管するが、古い資料は既に廃棄されているためだ。書き換えによって正確な数値が失われたことになる。

中小企業への影響ないか

 毎月勤労統計の不正では、雇用保険の失業給付が本来支払われる金額より少なくなるなど、実害が生じた。

 萩生田光一経済産業相が、建設統計書き換えに伴う数値の水増しに関し、中小企業向け債務保証事業への影響がなかったか調査する方針を示したのは当然だ。新型コロナウイルス禍で打撃を受ける中小企業を、これ以上苦しめてはならない。