【社説】衆院選挙結果 政権選択肢たり得ぬ立共共闘


立憲民主党の衆院選投開票センターの枝野幸男代表=10月31日夜、東京都港区、(竹澤安李紗撮影)

 第49回衆院選挙の投開票が行われ全ての議席が確定した。自民・公明両党により新たに発足した岸田文雄政権に対し、立憲民主、共産、れいわ新選組、社民の野党4党が共通政策を掲げて政権交代に挑んだ初の総選挙となったが、結果は野党共闘側の惨敗だった。

 野党共闘に加わらない日本維新の会が躍進し、自公与党は議席減ながら絶対安定多数を確保した。

 候補一本化も比例伸びず

 今回の選挙は、菅義偉前首相が内閣支持率の低下などを背景に9月の自民党総裁選挙に出馬しないことを決め、新たに総理総裁に岸田氏を選出して与党側は臨んだ。野党共闘側は、前哨戦の4月補欠選挙・再選挙、7月の東京都議会議員選挙、8月の横浜市長選挙などで優位な結果を見せ、首相交代に追い込んでの選挙戦だったが、逆に議席を減らす審判を受けた。

 立民は選挙前110議席から96議席に後退、共産は12議席から10議席へと減らし、社民は沖縄2区の1議席の維持に留(とど)まり、れいわは1議席から3議席になった。野党共闘側は選挙前の124議席から14議席減らす110議席と敗退した。

 その原因は一つに衆院選は政権選択の選挙であり、政権担当能力を有権者から問われ、日本の舵(かじ)取りを任せるに値する枠組みであるかが判断材料となったからだろう。目下の新型コロナウイルス対策、厳しくなる一方の安保情勢、成長戦略が問われる経済政策、少子高齢化社会への対応などに照らして勘案される投票行動の結果だ。

 国防に不利な憲法9条の改正阻止運動を戦後長く続け、日米安保条約を破棄し共産主義社会を目指す共産党と、日米同盟の維持を訴える立民とが共闘するのは大きな矛盾だ。

 これに少なからぬ有権者が疑問を抱いて、日本維新の会が公示前の11議席から41議席に躍進したことからも政権批判票を吸収したことは明らかだ。国民民主党も8議席から11議席に増やした。共産党と一線を画し、安保重視、成長戦略に必要な規制緩和など改革を唱える野党が受け皿となりつつある。

 ただ野党共闘側は、国民民主も含め、衆院解散直前に調整して289小選挙区のうち約4分の3に当たる217選挙区で候補者を一本化して挑む前例のない争いの舞台を用意した。

 確かに小選挙区では、自民党の甘利明幹事長らが敗れた首都圏をはじめ野党共闘側は議席を増やした。立民は小選挙区で公示前の48議席から57議席とし、候補者一本化の217選挙区では野党共闘側が51議席から72議席に増加した。

 半面、立民や共産は政策選挙を最も反映する政党名投票の比例代表で伸びずに議席減となった。政策に矛盾のある立民、共産の野党共闘では、共闘自体が互いの票離れを引き起こし、有権者は政権の選択肢に到底なり得ないと判断したと言えよう。

敵失による勝利と自戒を

 岸田政権は、政権に値しない枠組みを相手に公明の善戦に支えられて自民議席を減らしながら絶対安定多数を得た。敵失による勝利と自戒して政権の刷新と改革に努めるべきだ。