自民総裁選告示 憲法・安保の論議を深めよ


 菅義偉首相の後継を決める自民党総裁選が告示された。岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎規制改革担当相、野田聖子幹事長代行の4人が争う。勝者は第100代首相に就任することから、政治信条、価値観、国の在り方などについての論戦が不可欠だ。党員・党友にとどまらず国民にも理解されるよう丁寧で活発な議論を求めたい。

自民党総裁選候補者の共同記者会見を前に、撮影に応じる(左から)河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行= 17日午後、東京・永田町の同党本部

自民党総裁選候補者の共同記者会見を前に、撮影に応じる(左から)河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行= 17日午後、東京・永田町の同党本部

少子化への対策も重要

 本格論戦の皮切りとして所見発表演説会と共同記者会見が行われた。最も時間が割かれたのは、直面している新型コロナウイルスの感染防止策と経済政策だった。

 ただ、舌戦を交わしてもらいたかったのが4候補の違いが分かりやすい憲法改正と外交・安全保障政策だった。

 改憲については4候補とも前向きだったが、高市氏は「新しい憲法の制定に力を尽くす」とし、党内で議論された改憲4項目に「賛成は当然」とした。その上で危機管理条項、9条を指摘し、大規模災害、テロに備えるための私権制限や公共の福祉の概念を明確化することの必要性を挙げた。

 岸田氏が改憲実現に向けて「少なくとも任期中にめどを付けたい」と期限を示したのは評価できる。だが他候補と同様、中身の議論には入らなかった。河野氏の持論は「新しい日本の国をつくる」だが、具体像がはっきりしない。憲法は政策の背骨になる。どう改正するかは各候補の国家観や価値観が表れる。もっと議論を深めて語り合うことが肝要だ。

 外交・安全保障分野で聞きたかったのは「敵基地攻撃能力」についてだ。北朝鮮が15日、日本海に短距離弾道ミサイル2発を発射した。北朝鮮のミサイル発射は今年に入って5回目で、新兵器開発の加速化が懸念されている。

 河野氏は「発射台を見つけて破壊するのは困難」とし、日米同盟に基づく抑止力全体の向上で対応するとしている。高市氏は「敵基地の無力化」を可能にする法整備の必要性を主張。河野氏はこれを「昭和の概念」と批判している。他候補も含め、具体策を提示すべきである。

 中国が通商交渉の主導権を狙ってTPP(環太平洋連携協定)加盟を正式申請してきたことへの評価についても4候補にはもっと語ってもらいたかった。中国の軍事力増強の脅威、台湾と日本の関係に関する言及もなかったのは残念だった。

 野田氏が主張した少子化対策は国家安全保障の視点からも重要である。エネルギー政策も論じる必要があろう。ただ、皇位継承について「自分の意見を言うべきではない。国民に広く意見を求めていく」とし女系天皇も選択肢の一つと語ったが、国民に丸投げの姿勢ではだめだ。「保守の政治を自民党の中でつくり上げていきたい」という野田氏は同性婚や選択的夫婦別姓の旗振り役となっている。「保守」とは何かを聞きたい。

真の保守指導者選べ

 新型コロナ感染拡大という国難の下、内外情勢は緊迫の度を増している。国益を実現する真の保守リーダーが今こそ求められている。