G7サミット 自由陣営の対中結束を歓迎


 先進7カ国首脳会議(G7サミット)が英国で開かれ、採択した首脳宣言では覇権主義的な行動を強める中国と対峙(たいじ)する姿勢を鮮明にした。自由主義陣営のG7が結束して共産党一党独裁体制の中国に厳しい態度を示したことを歓迎したい。

 首脳宣言で台湾に初言及

 米国では現在、中国による台湾侵攻への危機感が高まっている。米軍高官は、中国が向こう6年間で台湾に武力侵攻する可能性があると警告している。

 沖縄県・尖閣諸島をめぐっても、中国は2月に海警船による武器使用について明記した「海警法」を施行。尖閣沖の接続水域ではきのう、海警船が122日連続で確認され、2012年9月の尖閣国有化以降で最長の連続日数を更新するなど、尖閣奪取への動きが強まっている。

 ただ、アジアと地理的に離れた欧州各国は従来、中国との経済的な結び付きを重視。首脳宣言に関しても、日米両国と欧州の「温度差」が取り沙汰されてきた。欧州は台湾明記にも慎重とされてきたため、菅義偉首相は欧州首脳との個別会談で対中認識の共有に腐心した。

 最終的にまとまった首脳宣言では、台湾に初めて言及して「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記。尖閣を含む東・南シナ海への中国の強引な進出についても「深刻な懸念」を示した。

 また、香港や新疆ウイグル自治区の人権抑圧に言及して「人権と基本的自由を尊重する」よう要求。中国が進める経済圏構想「一帯一路」に対抗し、途上国のインフラ開発を支援するG7の連携強化も打ち出した。

 G7が厳しい対中認識で一致したことを評価したい。サミット閉幕を受け、議長のジョンソン英首相は「G7が民主主義と自由、人権の恩恵を世界に示す必要がある」と訴えた。今後も日本は米国などと連携し、多国間の枠組みで対中包囲網を構築することが求められる。

 サミットでは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大も主要議題となった。途上国などの感染収束を後押しするために「資金および現物供与を通じ、来年にかけてワクチン10億回分の供与に相当する支援」を打ち出した。中国やロシアの「ワクチン外交」に対抗するものだ。

 特に中国は、ワクチンを利用して台湾と外交関係を持つ国々の切り崩しを進めようとしている。パラグアイは、ワクチン仲介業者を通じて、中国製ワクチンの提供と引き換えに台湾との外交関係を絶つようにとの圧力を受けている。

 こうした卑劣で身勝手な振る舞いは、断じて容認できない。G7はワクチン支援を一層強化する必要がある。

 安心安全な五輪実現を

 首脳宣言は東京五輪・パラリンピック開催への「支持」を表明。菅首相は7月23日開幕予定の五輪開催への決意を示し、各国に「強力な選手団」派遣を呼び掛けた。

 日本国内で五輪開催への反対意見が根強い中、G7の支持を得られたことは心強い。菅首相は感染対策を徹底し、安心安全な大会の実現に全力を挙げるべきだ。