英米主導で民主諸国団結示す


東洋大学現代社会総合研究所研究員・西川 佳秀

西川 佳秀

 

 今月11日から13日にかけて、英南西部コーンウォールで先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開催された。欧州連合(EU)からの離脱を機に、世界国家としての存在感を示そうとする主催国英国のジョンソン首相の意気込みが強く感じられるサミットであった。対面形式では2年ぶりだったが、コロナ対策や気候変動・環境問題など主要な議題に対する各国の合意取り付けも順調に進み、会議は成功を収めたといえる。

 米国のバイデン大統領にとっては初の外遊であったが、英米両首脳の息も合い、会議に先立ち新大西洋憲章が発出されたほか、一連の討議でも英米が主導する会議となった。特にそれが強く表れたのが中国問題に対する積極的な取り組みであった。

 発表されたG7サミット首脳宣言では、人権や基本的自由の尊重を中国に求めるとともに、南シナ海等の状況を深刻に懸念し、力による現状変更や緊張を高める中国の試みに反対したほか、初めて台湾問題を取り上げ、台湾海峡の平和と安定の重要性がアピールされた。中国の専制と抑圧を許さず、自由と平和を守るための民主諸国の団結と結集を世界に示した今回のサミットは、歴史に名を残すものとなろう。

 日本についていえば、東京五輪・パラリンピック開催で各国の支持取り付けに成功したことは、菅義偉政権にとって大きな成果であった。各国の期待を裏切らぬよう感染の防止に向けて一層の取り組みが求められる。

 各国首脳が集う会議場の窓からは、雄大な海が眺められた。海洋国家英国を象徴する演出であろう。日本もまた海洋国家であり、しかも「自由で開かれたインド太平洋」構想の提唱国である。

 五輪問題やコロナ対策だけでなく、海洋諸国の連携や海洋自由の確保に向けて、菅総理から各国をリードする、より具体的な提案や発言があれば、日本の存在感をもっと強く世界にアピールできたのではないだろうか。