中国対抗策、具体化が課題
G7サミット ウイグル問題では後退
13日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、首脳宣言で、「台湾海峡」に初めて言及するなど、幅広い分野で中国を牽制(けんせい)した。ただ、具体的な措置は乏しく、覇権主義的な行動を強める中国に歯止めをかける上で、取り組むべき課題は多い。
「前回のG7サミットでは中国への言及はなかったが、今回はウイグルや香港の人権侵害などの問題を明確に指摘している」。閉幕後の会見で、バイデン米大統領は、記者から首脳宣言について「米国が望んでいるほど、中国に厳しい内容にならなかった」と指摘されたことに、こう反論した。
首脳宣言では「台湾海峡」について初めて言及したほか、中国の人権問題への懸念、新型コロナウイルスの再調査要求などを盛り込んだ。だが、中国を厳しく非難するところまで踏み込まなかった。
中国・新疆ウイグル自治区におけるウイグル族の強制労働問題については、米国側は、非難する文言を宣言に盛り込むよう働き掛けてきたが、中国からの経済的な報復を懸念するドイツやイタリアに配慮し、名指しを避けた形となった。共同宣言では、10月のG7貿易相会合の前に「グローバルなサプライチェーンにおけるあらゆる形態の強制労働の利用の根絶」する取り組みの分野を特定するとしたが、今後、実効性のある具体的措置に踏み込めるかは不明だ。
新疆ウイグル自治区に関しては「人権の尊重を求める」との表現にとどまった。強制労働や強制不妊に言及し、「深刻な懸念」を示していた先月のG7外相会合の共同声明からトーンダウンした。
また、新型コロナウイルスの起源に関しては、世界保健機関(WHO)による科学的で透明性のある再調査を求めた。前回調査では、中国が生データの提出を拒否しただけでなく、調査団にウイルス流出が疑われる中国・武漢ウイルス研究所と関係が深い科学者が参加し、利益相反との批判を浴びた。各国は、中国の影響が強いWHOに再調査を求めるだけでなく、中国に制裁などの圧力をかけ、調査への協力を引き出すことが求められる。
中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗する数千億㌦(数十兆円)規模のインフラ投資計画で合意。しかし、具体的な資金拠出の手法については、首脳宣言で言及はなく、今後作業部会での協議に委ねられることになる。