新執行部の「社会民主」、労組シフト示した論客陣

細る労働界で巻き返しか

 社民党は昨年10月14日に吉田忠智党首が就任、党首・幹事長とも自治労出身者となり、新執行部は労組に軸足ならぬ両足を置く布陣となった。機関誌「社会民主」も2013年12月1日発行の12月号になると労組色が前面に出ている。

 特集「働くものの権利と労働運動」の記事4本は、連合中央アドバイザー・田島恵一氏、連合総合生活開発研究所副所長・龍井葉二氏、自治労中央執行委員・亀崎安弘氏、日本航空キャビンクルーユニオン・鈴木圭子氏と、すべて労組関係者である。

 同誌は9月号でも労働問題を特集したが、このときは弁護士、学者らによる記事。12月号編集後記は「本誌は9月号でも『ワークルール』特集を組みましたが、その内容は非正規公務員、公務公共サービス労働者に関する問題が中心となり、民間労働者を包括した集団的労使関係の諸側面については、宿題の格好になっていました」と述べ、「今回は幾多の中小企業労働者の闘いの現場をくぐり抜けてきた方たち」が登場したと企画を説明した。

 しかし、3カ月遅れの「宿題」というより、やはり党首交代で労働界重視になったと見える。ただし労組といっても社民党支持労組はジリ貧状態だ。だからこそタレント弁護士の福島瑞穂氏を党首起用して無党派層を引きつけようとした。が、これも10年に及ぶ選挙の連敗で、再び労働界へ目を向けた格好だ。

  社民党は労組・政界再編の貧乏くじを引いた。1989年の労働界再編で連合(日本労働組合総連合会)が発足してから7年経た96年1月、村山富市首相辞任後の社会党が社民党に改称、その後、多くの議員が連合の支援で同年9月の民主党結成に加わったが、この流れから排除された、あるいは残留した議員らが社民党に留まった。

 現在の社民党の支持労組は地方自治体職員の労組である自治労で、自治労は連合傘下労組だが青森、岩手、宮城、秋田、山形、新潟、富山、長野、香川、愛媛、佐賀、大分、宮城の13県本部が社民党を支持している。ちなみに吉田氏は大分、又市氏は富山の自治労県本部書記長を務めた。

 また、社民党を支持する民間労組は2009年7月に私鉄総連が民主党支持に転じたことによってなくなった。つまり、民間よりは雇用が安定している地方公務員の自治労の一部に担がれているにすぎない。

 同誌は、民間企業の非正規雇用、契約社員、正社員などの格差を指摘するが、現場労働者の交渉をバックアップする政治力が問題だ。労組をデモ動員するだけでは支持は細る。

 連合が民主党政権時代のていたらくに愛想を尽かし、支持を見直す単産も出始めるなど政党支持に動揺が生じたことも社民党が労働界での巻き返しに注目する理由だろう。しかし、共産党も虎視眈々(たんたん)と労組票拡大を狙うほか、賃上げの陣頭指揮をとっているのが安倍首相という、20年前までの自社対決時代にない矛盾にどこまで太刀打ちできるのだろうか。

解説室長 窪田 伸雄