気配りが9割 永田町で45年みてきた「うまくいっている人の習慣」


成功者は「人を喜ばす」天才

政治評論家 田村 重信氏に聞く

 自民党本部職員として45年間働いてきた著者は、これまで16人の首相をはじめとする大物政治家や優秀な官僚たちと共に仕事をしてきた。長年観察してきて分かった、「成功者の共通点」を明日からでも実践できるルールとしてまとめたのが「気配りが9割 永田町で45年みてきた『うまくいっている人の習慣』」。著者の元自民党政務調査会調査役で政治評論家の田村重信氏に、本書の見どころや良好な人間関係の築き方について聞いた。
(聞き手=政治部・岸元玲七)

困難を人のせいにしない
自分を高め人間関係円満に

普段は政治や安全保障関連の書籍を出版しているが。

小泉進次郎環境相と田村重信氏

特別対談が収録された「気配りが9割」を持って記念撮影する小泉進次郎環境相と田村重信氏=環境省大臣室(田村重信氏提供)

 今回は政治に関する本ではないが、「人格者たちの共通点」をテーマに、若い世代のビジネスマンが読むと非常に参考になる内容になっている。年配の方や部下を持つ立場であっても「なるほど」と思えるように、仕事をしていく上で参考にしてほしい。

本書の見どころは。

 私がこれまで関わってきた政治家や大物芸能人から学んだ、成功している人たちの習慣をたくさん紹介している。読んだ中で一つか二つでも、「これはいいな」と思う項目があればぜひ実践してもらいたい。

 世の中には必ずといっていいほど「嫌いな人」がいる。そういう人に対し、「あの人が嫌だ、あの人が変わればいいじゃないか」と思うが、相手は変わらない。だが自分は変えることができる。自分から、嫌いな人に対して「おはようございます」とあいさつし続けると、向こうも「おはよう」と返してくる。そうすると人間関係が和む。自分を変えることで、良好な人間関係を築くことができる。

人間関係を良くするためには何から始めればいいのか。

 まずは、相手との約束を守る、時間を守る。当たり前のようだが、それが極めて重要だ。上司であれば、下の人を大事にし、ちゃんと「ありがとう」を言う。信用を貯めることが重要だ。生き方によって、努力していけば良くなる。一番大事なのは「あなたは目の前の人を喜ばせているか」。成功者は人を喜ばす天才。誰もが実践していることだ。家族や同僚、仕事相手を大事にしているか、そこからスタートする。

単独取材を受けない小泉進次郎環境相との特別対談が収録されているが、どうやって実現したのか。

 小泉氏が国会議員になって最初に対面した時、彼が三つのことを言った。一つは、「父がお世話になりました」。父の小泉純一郎元首相が首相退任後の衆議院選挙で全国遊説をした際、私がお供をしたこと知っていた。もう一つは、「田村さんの本をよく読んでいます」と。

 そして、彼が米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)に所属していた際、上司のマイケル・グリーン氏から「何かあったら田村さんに相談するといいという話を聞いている」ということを言ってくれた。

 また、衆議院の安全保障委員会で小泉氏が質問をすることになったので、「知恵を出してください、資料をお願いします」と言われた。資料を作り説明に行くため事務所に連絡すると、「進次郎が向かいます」という話になった。国会議員になると立場が変わるから、こちらから出向くのが当然なのだが、私のデスクまで説明を聞きに来た。

 こういうことが2回ほどあり、小泉氏のためにいろいろと動いたこともあって今回の対談のお願いを聞いてくれた。本が出来上がった時、環境省に持って行った(写真)。まさに、進次郎氏は気配りができる男だ。

本書の小泉氏が「嫌いだ」と言われた相手に自ら距離を縮めていったエピソードは印象的だ。

気配りが9割

 小泉氏らしいエピソードだ。普通は否定されたらお互い喧嘩(けんか)して疎遠になるが、そこを逆手に取って親密になるのはすごい。そこが彼の真骨頂だ。嫌な人がいるときにどう対応するか。お互い嫌でなくなるには自分で変わらなくてはいけない。

 仕事をしていて困難な時に、他人のせいにしないで、自ら努力して工夫し、自分を高めていけばうまくいく。そこが非常に大事だ。何か問題が起こるとすぐ社会のせい、他人のせいにしてしまう人と、辛いけれどもがんばって努力する人とでは大きな違いが出てくる。

テレワークやリモート飲み会など、主流となっているオンラインでの交流についてどう思うか。

 今の時代、接触を避けてリモート中心の生活をしているが、本当は直接会って、お互い顔を見ながら、雰囲気も感じながら何かをやることが非常に大事だ。例えば音楽も、テレビやネットで聞くのと生で聞くのとでは全然違う。お礼状を出す場合でも、メールや電話よりハガキに手書きで書くと違った雰囲気が出る。ハイテクノロジーの時代になればなるほど、実はハイタッチ、人と人との直接の触れ合いが重要だ。

田村さんにとっての「気配り」とは。

 気配りとは、相手の立場になって「こうしたら喜ぶだろう」と思うことを実行することだ。仕事の効率を上げるための業務という意味で使われる「ロジスティック(ロジ)」という言葉があるが、ビジネスではこれが極めて大事だ。

 ロジがきちんとできないと駄目で、「相手が喜ぶことは何だろう」といったことが重要だ。会合での段取りや客の席順などを事前にしっかり取り決め、失敗がないようにしないといけない。以前、自民党の全国研修会を行った際、参加者が1000人を超え、受付だけでも混乱していたが、都道府県ごとにプラカードを作り集合してもらうように工夫した。

 何か行動を起こす際には、「こうすれば良くなる」という想像力を働かし、何でも失敗を恐れず実際にやってみることだ。

 たむら・しげのぶ 1953年、新潟県栃尾市(現長岡市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会勤務を経て、自民党本部勤務。政調会長室長、総裁担当などを歴任。政務調査会の調査役・審議役などとして外交・国防・憲法・インテリジェンスなどを担当。現在、拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー、日本国際問題研究所客員研究員、パトリオットTVメーンキャスターなどを務める。